何が言いたいのかわからない…高裁の裁判官が簡裁判決の書き方を批判

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後方の安全確認を怠ったまま車線変更を行い、後続のバイクと衝突する事故を起こしたとして業務上過失傷害の罪に問われた男に対する控訴審判決公判が6日、大阪高裁で開かれた。

裁判長は「一審判決の意味がわからない」としてこれを破棄。一審と同額の罰金刑を被告に改めて命じるという、極めて珍しい出来事が起きた。

問題の事故は2003年3月24日に兵庫県神戸市北区内で発生している。55歳の男が運転するタクシーが路上にいた客を拾おうと、後方の安全確認を怠ったまま急に車線変更を行い、後続のバイクと衝突。運転者に全治3カ月の重傷を負わせた。

男は業務上過失傷害で検挙され、同罪で起訴。一審の神戸簡裁では罰金18万円の支払いを命じる有罪判決を受けていたが、被告側がこれを不服として控訴していた。

6日に開かれた控訴審判決公判で、大阪高裁の白井万久裁判長は、一審で認定された被告の過失部分について「一審判決では“後方の安全確認を怠った”と認定しながらも、その一方で“徐行すれば確認できた”という記載がある。現状では一審で言うところの被告の過失が後方の安全確認を怠ったことなのか、徐行しなかったことなのかわからない。前者についてはそれを打ち消す“ミラーで確認した”という記載もあり、一審判決は何が言いたいのかまったくわからない」と痛烈に批判した。

その上で「事故は被告が後方の安全確認を怠った状態で、漫然と車線変更したことが原因で発生したことは明白で、この部分が被告の過失に当たる」と改めて認定。「過失認定に疑問がある」とした一審判決を破棄し、一審と同額の罰金18万円の支払いを命じる判決を改めて言い渡した。

下級審の判断を上級審が否定すること自体はあまり珍しくなく、裁判官に自由心象が許されている以上は起こりうる自体ではあるが、判決の理由について「意味がわからない」として破棄することは大変珍しく、一審と同じ刑罰を改めて言い渡すというのはさらに珍しい。

《石田真一》

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