神奈川県警は17日、浦賀署の正面駐車場に置かれていた鑑識用の捜査車両を盗み、泥酔状態で運転していたとして32歳の男を窃盗容疑で逮捕した。男は意図してクルマを盗み出したのではなく、ある偶然からこの車両を持ち出してしまったらしい。
神奈川県警・浦賀署の調べによると、捜査車両が盗まれる事態が発覚したのは17日の午前10時すぎ。
横須賀市内にある会社の社員を名乗る男性から浦賀署に対して「部下が酔った勢いで警察のクルマに乗ってきてしまったようだ。本人は自分のクルマのカギでドアが開いて、エンジンも掛かってしまったと言っている。持ってきてしまったクルマのナンバーは…」という通報が寄せられた。
同署員が確認すると、正面玄関の脇に駐車していたはずの鑑識班用の捜査車両が無くなっていることがわかった。捜査車両を盗んだという32歳の男は午前10時20分ごろ、上司に連れられ、捜査車両とともに出頭。窃盗容疑で逮捕された。
取り調べに対し、この男は「泥酔状態で歩いているとき、自分のクルマと似たようなクルマを見つけ、自分のクルマがここにあると思って乗り込んでしまった。そのまま近くの空き地まで運転し、仮眠していた」と供述。「カギは自分のクルマのものが使えた」とも話した。
これを受け、署員が確かめたところ、男が所有するクルマのカギを使っても捜査車両のドアを開錠するとこはもちろん、エンジンまで始動できることが判明した。
男のクルマは日産『ブルーバード』、捜査車両は日産『アベニール』で、ほぼ同時期に生産されたタイプだった。カギの形は違ったが、男の所持していたカギは磨耗しており、これが原因でロック解除状態になってしまったとみられる。
実は「違うクルマのカギで開錠できてしまった」というトラブルは全国で頻発している。盗難防止対策がなされ、キーシリンダー自体の構造が複雑になる以前のクルマ(1998年以前の一部車種)では構造が単純なので、新品のカギでは開錠できなくとも、磨耗したカギではロックピンを動作させてしまうこともある。
今回は捜査車両を持ち逃げしてしまうという珍事によってクローズアップされたが、「別のカギが使えてしまうということ自体はあまり珍しくない」と、カギの専門家は話す。
なお、今回の場合、容疑者が持っていたカギで捜査車両のドアが開くことはわかったが、その逆のパターン(捜査車両のカギで容疑者所有のクルマのドアが開くかどうか)については実証していないそうだ。