警視庁は2日、タクシー運転手を脅して現金を奪ったものの、運転手の機転によって車内に一時監禁状態となった28歳の男を強盗の現行犯で逮捕した。タクシーの構造を知らなかった容疑者が、車両構造を熟知する運転手に敗北したといえる。
警視庁・向島署の調べによると、事件が起きたのは2日の午前1時50分ごろだという。新宿からタクシーに乗車し、墨田区内まで向かうように指示していた若い男が、墨田区墨田1丁目付近でタクシーを降りようとした際、38歳の運転手に対して「カネを出せ」と脅した。男は運転手の腹部に金属状のものを当て、「凶器が何かわかるか?」などと質問していた。
運転手は持ち合わせていた売上金約2万7000円を後部座席の男に渡すと同時にエンジンを切り、そのまま外に飛び出すとクルマのドアをロックしてしまった。そして通りがかった別のタクシーの運転手に対して「強盗だ、助手席側のドアを頼む」と言い、2人でドアが内部から開かれないように押し続けた。
このタクシー、エンジンを切ってドアをロックすると後部座席のドアが内部からは全く開かなくなるという構造になっている最新モデル。運転席と助手席のドアは開くが、後部座席から前部には移動しにくい構造にもなっており、前部のドアを開かないように押さえられてしまえば車内からの脱出は事実上できなくなってしまう。
男は現金を奪ったものの、そのまま車内に監禁される形となり、通報を受けて駆けつけた向島署員に強盗の現行犯で逮捕された。もちろん奪われた現金も全額取り返している。
警察の取り調べに対し、この男は「カネが欲しかった。まさかタクシーから出られなくなるとは思わなかった」などと話しているという。男が運転手に突きつけた凶器は金属製のライターであることも判明している。
なお、同様の構造を持ったタクシーは都内に数百台が走っており、徐々に増えつつあるという。