ベトナム新興EVメーカー・ビンファスト社の参入で競争が激化する米国EV市場

ビンファスト VF7(参考画像)
  • ビンファスト VF7(参考画像)
  • ノースカロライナ州にEV工場を建設中(イメージ)
  • ビンファスト(参考画像)

今年8月初旬、ベトナムの電気自動車(EV)新興企業ビンファスト(VinFast)が米国株式市場デビューし話題を呼んだ。テスラやますます攻勢を強める国内自動車メーカーが支配する市場で、外国ブランド、それも新興企業が成功できるかどうか、考えてみたい。

◆新興EVメーカーの野心的な戦略

ビンファストの評価額は、VW、フォード、ゼネラルモーターズなどの老舗自動車メーカーを追い抜き、850億ドルにまで達した。これは、ベトナムに本拠を置く同社と米国の上場特別目的買収会社(SPAC)であるBlack Spade Acquisition Co.との合併に続くものだ。

このマイルストーンは、ノースカロライナ州にEV工場を設立するための40億ドルの投資計画に続いて実現した。自動車の生産は当初の想定よりほぼ1年遅れ、2025年に開始される可能性が高いが、北米市場におけるビンファストの製造拠点となることが期待されており、初期生産能力は年間15万0000台と予測されている。

充電とモバイルアプリの統合に関する超高速充電ネットワークであるElectrify Americaとの提携が、北米市場に対するビンファストの野心的な計画を強化する。この提携は、2022年4月のニューヨーク国際オートショーで発表された。このような戦略的な動きが、規制、人口動態、技術、市場の力に支えられたEV企業が積極的に地理的拠点を拡大しようとしている背景にある。

ここで考慮すべき重要な側面が2つある。まず第一に、中国や欧州に比べて立ち上がりが遅れている米国のEV市場が、本当に利益につながるターゲットとなるのかどうか。そして第二に、テスラが独占し、伝統的な自動車メーカーと国内の新興企業の両方が電動化の取り組みを加速するために時間、資金、リソースをつぎ込む市場で、新興外国企業にチャンスがあるかどうかだ。

◆米国はEVメーカーにとって有利な市場となるか

米国におけるEV普及レベルは依然として低い水準にあるが、強力な政策支援、入手可能性とモデルの多様性、そしてより伝統的な自動車メーカーや新興企業の参入による競争力の向上により、増加傾向にある。

政策的取り組みは、全国で車両の電動化を促進する主要な触媒となることが証明されている。サポートの範囲は、購入奨励金や排出基準から電化目標やインフラ開発にまで及ぶ。クリーン エネルギー経済への移行を目指して、近年、米国クリーン エネルギー法、アップグレードされた再建法、米国のインフラ計画など、数多くの政策措置が導入されてきた。

このような政策が推進力となると同時に、充電インフラや製造施設の改善が相乗効果をもたらし、EVの普及が促進されている。同時に、バッテリー生産コストの低下と技術の進歩により性能パラメータが強化され、より幅広い消費者層にとってEVがよりアクセスしやすく、手頃な価格になった。

さらに、より多くの新規参入企業や伝統的な自動車メーカーがEVの開発に注力するにつれ、BEVやプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)モデルの範囲は着実に拡大している。したがって、従来のICEフリートが老朽化するにつれて、総所有コスト(TCO)の削減という経済的観点と、ゼロエミッションという環境的観点の両方の観点から、これを電気同等のものに置き換える動機がこれまで以上に高まっている。


《フロスト・アンド・サリバン・ジャパン株式会社》

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