【キャデラック CT6 試乗】新しいフラッグシップにふさわしい…松下宏

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キャデラック CT6
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キャデラック『CT6』は新しいフラッグシップサルーンとして導入されたモデルだ。FR系(CT6はAWD)の新プラットホーム(オメガ・アーキテクチャー)をベースに開発されたモデルで、2020年に向けて投入される新車群の先駆けである。

オメガ・アーキテクチャーはアルミ合金を中心に様々な素材を採用し、大幅な軽量化が図られている。ホワイトボディは、格下のBMW『5シリーズ』やアウディ『A6』より軽く、1920kgの車両重量は競合車となる『Sクラス』や『A8』などラグジュアリーサルーンに比べて軽い。フルサイズ、フル装備の高級セダンとは思えない軽さだ。

ボディサイズは全長5190mm×全幅1880mm×全高1495mm。Sクラスや7シリーズ、レクサス『LS』などの標準ボディ車と並ぶサイズである。フルサイズのアメリカ車というと、相当に大きなクルマを思わせるが、CT6は大きすぎるわけではなく、競合車と同等のサイズ感である。

外観デザインは保守的な印象が強い。大きなフロントグリルを囲むようにヘッドランプやLEDランプが配置され、堂々たる雰囲気が演出されている。

インテリアはラグジュアリーな雰囲気にあふれ、ホワイトの本革シートや木目パネルと入念な作り込みが高い質感を表現する。後席には格納式のテレビが装備され、足元の広さも余裕十分。オーナーが後席に座るクルマと考えたら良い。

搭載エンジンはV型6気筒3.6リットルの自然吸気DOHCだ。キャデラックのフラッグシップがV8ではなくV6の3.6リットルというのはちょっと意外な感じだが、今はダウンサイジングの時代である。自然吸気ながら直噴仕様によって250kW/386Nmのパワー&トルクを発生する。排気量から見ても優れた性能である。

実際に走らせた印象も、何の不満も感じさせることがなかった。むしろ乗り込む前に想像していた以上の余裕があった。本国には2種類のターボ仕様エンジンが設定されているが、自然吸気でこれだけ走るならあえてターボ仕様でなくても良いと思った。

組み合わされる電子制御8速ATが滑らかな変速を実現することも、走りの余裕につながる要素である。クルージング中には何速で走っているのか分からなくなるような滑らかさ、そして静かさを感じさせる。

注目されるのはオメガ・アーキテクチャーに基づくシャシー性能だ。CT6にはアクティブ・シャシーシステムが採用され、先進技術がてんこ盛りで搭載されている。アクティブ・オンデマンドAWDやアクティブ・リアステア、そしてキャデラックが伝統的に得意とするマグネティック・ライドコントロールの最新版などがそれだ。

これらによって、走行条件に応じてどのホイールでも駆動し、どのホイールでもステアする、そんな走りを可能としている。AWDはそれを意識させることなく安定した走りを実現し、高速レーンチェンジでの落ち着いた挙動はアクティブ・リヤステアによるものだ。

タイヤが20インチの40偏平という巨大なサイズだったこともあり、マグネティック・ライドを装着する割には乗り心地が硬めの印象だったものの、これはモードの切り換えによって変化させられる。

CUE(キャデラック・ユーザー・エクスペリエンス)に代表される快適装備のほか、歩行者にも対応する自動ブレーキやオートパーキングなど、最新の安全装備も満載したCT6の価格は998万円に抑えられている。

試乗車の価格は有償ペイント代12万9000円が追加されていたので1000万円超になっていたが、フルサイズ、フル装備のラグジュアリーサルーンが1000万円そこそこで買えるのは、競合車の価格を考えるまでもなく、相当にリーズナブルな印象である。

大柄なボディの左ハンドル車なので、一般のユーザーが選ぶクルマにはなりにくい。でも、ショーファードリブンとして使うなら、左ハンドル車であることは利便性につながる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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