ヤマハのデザイン拠点「イノベーションセンター」が独創的なデザインになった理由

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長屋明浩デザイン本部長
  • 長屋明浩デザイン本部長
  • 長屋明浩デザイン本部長
  • イノベーションセンター外観
  • フロアには議論や休息のできる空間が点在する
  • 階段下の「ダンスフロア」は情報発信スペースとして使える
  • 大小あわせて6台の定盤があるクレイルーム
  • VRラボラトリーのスクリーンは、いずれもっと大きなものに変更したいという
  • ターンテーブルのあるプレゼンテーションルーム
22日に公開されたヤマハ発動機の新たなデザイン拠点「イノベーションセンター」。独創的な構造や内装に注目が集まっているが、なぜこのようなデザインとなったのか。デザイン本部の長屋明浩 本部長が、その意図やコンセプトについて語った。

イノベーションセンターは「製品をデザインする」というだけでなく、企業やブランド全体のデザインを俯瞰してコントロールする「デザインの司令塔」としての役割も担う。そして「本質的、根源的なデザイン開発ができる場所」だと長屋本部長。

気になるのは、デザイン開発をおこなう施設でありながら、よくある「デザインセンター」や「デザイン棟」といった呼称ではないこと。これは「エンジニアと共創活動するため、というのが大きな理由のひとつ」だという。「デザイナーとエンジニアが一緒になって考えることで、イノベーションを喚起し、先行開発につなげる。これによって新たなシーズ(種)が生まれることを期待しています」とのことだ。

注意すべきはここで先行開発、つまりアドバンスドデザインのためと言っていることだ。これは「より前に、より広く開発作業をやりたい」という意図が反映されている。

メカニズムをプラットフォーム化し、そこからさまざまな商品を素早く派生させるというのが、業種を問わず昨今の商品開発の主流。これはコスト低減や開発期間短縮には有効だが、コントロールを誤ればデザイナーをスタイリストとしてしか活用できないことになりかねない、という危機感があるようだ。

「根源的な部分まで遡らないと、本質的なデザイン(スタイリングに留まらないデザイン)はできません。だから”デザインの前さばき”が重要になってきます」という。「これにはオープンイノベーションが必要。さまざまなリソース(資源)を取り入れ、発想の”仕込み”をやらなくてはいけない」という意図が「より前に、より広く」という言葉に込められているわけだ。

こうした発言から、2~4階の空間が吹き抜けで連続し、また各フロアには壁もドアもないという独特なデザインとなっている理由が見えてくる。視線が遮られない「立体的なワンルーム」となっているのは、部署間の物理的な垣根を取り払うことで活発なコミュニケーションを促すため。さまざまな価値観や考えから生まれた、新たなアイデアやコンセプトを先行開発という具体的な動きにつなげる機能を建物全体に持たせた結果なのだ。

建物のレイアウトやデザインは日建設計と、その内部で社内外のスペシャリストを集めてデザインを手がけるNAD(NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab.)、そして施工担当の安藤ハザマとのコラボレーションで進められている。

「初期段階から、中ではどのような使い方をするのか、スタッフにどのように働いてもらうのか、といったことを議論して空間を作り上げています」とのこと。長屋本部長は「中で働く人は、毎日を過ごす建物の影響を受けないはずがない。だから”そこに居るだけでヤマハらしくなっちゃう”というぐらいのものがいい」という要望を出したという。

フロアは一般的なオフィスに採用されるフリーアクセスフロアではなく、コンクリートの打ちっぱなし。コードやケーブルは天井付近に渡したレールを使って取り回している。

見栄えを整える手間はかかるが、代わりにレイアウト変更の際の工事の手間は減らすことができ、建物そのもののロングライフ化を図ることができるのがメリットだという。大がかりなレイアウトを変更する必要が出てきても、建物内で醸成された「ヤマハらしい空気感」はそのまま継承できるようになっている、という言い方もできるだろう。

なおデザイナーが働くフロアに点在するミーティングスペースやリラックスエリアなどの調度品や什器は「タイムレスなテイストにしてほしい」とリクエストした結果、採用されたものだとか。ロングライフの建物とともに、普遍的な価値観の空間を作り出す効果がありそうだ。

「どれも新品を購入したものですが、古くからあるような感覚で、さりとてレトロというわけではない」と長屋本部長。 ラウンジ調ありキッチン調ありとバラエティは豊かなものの 「タイムレスということでは一貫しています。ゆるやかな統一感を狙ってくれたようです」と評価している。
《古庄 速人》

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