ホンダの新型『CB1100』シリーズ。従来より工程を増やして製造されたスチール製のフランジレスフューエルタンクは、思わず手で触れたくなるようなフォルムで、彫りの深い立体感を実現している。
タンクでは、底板を縁取るシーム溶接のフランジを排除した。車体製造モジュール・プレス溶接ユニット・技術開発PL・小坪義佳氏はこう言う。
「過去のフランジレスタンクの量産では、溶接の際に発生する鋼板のひずみ、溶け落ち、割れなどに悩まされました。それらの課題を克服した、MAG溶接によるフランジレスタンク量産技術を採用しました。今後の他機種への水平展開にも可能性が見えてきました」
「ブレイクスルーは、溶接時に掛かる熱と、鋼板プレス時に生じる残留応力の影響を、方法や溶接手順にいかに読み込むか。前工程のプレス成型との整合も図り、日程の迫る中でチーム一丸となって取り組みました」
「従来は“あたりまえ”とされてきたことにも、先入観を持たず“何故こうなってしまうのか”を考え、試し続ける若手メンバーの粘り強さと探究心に、チーム全体が触発され、課題を解決できました。やればやるほど求める物に近づく溶接の面白さ、奥深さを、技術者として再認識できました」
新型CB1100シリーズのフランジレスフューエルタンクでは、均一で滑らかな溶接ビードを実現。タンク溶接長1.5m弱。溶接波形高速制御によりスパッタ(溶接時に飛散付着する金属粒)を抑えた溶接をおこなっている。
「CB1100RS」では、水転写式のタンクストライプを採用し、クリアトップコート後のステッカーによる段差を極力抑えている。