“日本一失敗した男”から“ガラス・ソムリエ”に…魔法のようなガラス再生

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「ガラス・ソムリエ」など数々の異名を持つ平井氏
  • 「ガラス・ソムリエ」など数々の異名を持つ平井氏
  • 温度や湿度なども計算に入れ施工にあたる
  • 数々の失敗から得た卓越した技術が光る
  • ガラスに向き合う表情は、まさに「職人」という言葉がぴったり
  • 東京都江東区にある東京営業所・研究所
ウインドウリペアの世界で「ガラス・ソムリエ」「ガラスのドクター」「ガラスの魔術師」など、数々の異名で呼ばれる男がいる。

それが、ガラスリペア事業などを行うHI-LINE22(本社横浜市中区)の平井宏治社長だ。“日本一失敗した男”と自らを称しながら、ほかでは修復不可能と言われたガラスをも再生させる技術力で、注目を集めている。


◆国内外からリペアの依頼が殺到

ガラスに向き合う表情は、まさに「職人」という言葉がふさわしい。普段はガラスの傷消しを本業とし、国内外から依頼が殺到する。忙しい日々を送る平井氏だが、ここまで信頼を得ている理由は、ガラスの傷を研磨技術で消すなど、その卓越した技術にある。

2004年にHI-LINE22を設立。以降、現場に立ちながら、運営するスクールでは後進の指導にもあたる。数々の施工を積み重ね、今では業界で「ガラス・ソムリエ」などと呼ばれるようになったが、そのことを本人に聞くと「周囲が勝手に呼び始めた」と笑った。しかし、話のなかでガラスに向き合う姿勢に触れると、なぜそう呼ばれるようになったのか、すぐに納得ができた。


◆施工時には気温や湿度なども考慮

たとえば、ガラス施工時には、その日の温度や湿度を考慮しながら作業を進める。周囲の環境によってガラスは膨張・伸縮をする。それを見極め、作業方法や液剤などを使い分けるという。その考え方は、料理や天候に合わせワインを選ぶソムリエそのものだ。

また「磨くことや、リペアよりも、大事なのは事前の診断」と医者のような言葉も口にする。このような哲学の一つひとつが、異名誕生に繋がる。


◆失敗から学んだ、確固たる技術

こだわるものはシンプルに「技術力」だ。ガラスリペアとは無縁の建設業に従事していたころ、ひょんなことから、ガラスの修復を請け負うようになった平井氏。「やったことのないものと、ずっと戦ってきた」と当時を振り返るように、施工しては傷つけ、弁償の日々が続いたそうだ。ウロコ除去と傷消しで重ねた失敗は数え切れない。“日本一失敗した男”という自称は、そんな経験から生まれた。

しかし、タダでは転ばなかった。傷つけてしまったガラスを引き取り、持ち帰っては研究を繰り返した。こうして技術を向上させ、いまではほかの店舗で「修復不可能」のレッテルを貼られたガラスをも再生させる技を身に付けた。


◆売っていない「経験、知識、技術」を追い求めて

平井氏の施工を見た人は、よくこんな質問を投げかけるそうだ。

「この道具はどこのメーカーのものですか?」

すでに施工が不可能なガラスを、まるで魔法でもかけたかのようにキレイにする姿を目の当たりにしたら、仕掛けは道具にあるという考えが湧き上がるのも不思議ではない。しかし、それは道具だけがもたらす結果ではない。これまでの「経験」から得た「知識」と、そこから引き出される「技術」の部分が大きい。

「売っているのは道具と材料だけ。経験、知識、そして技術は売っていない」

そんな言葉に、これまでに積み重ねた年輪の厚みを感じた。


◆“失敗のススメ”と諦めない気持ち

運営するスクールには、すでにガラス施工に従事する者も参加する。そこでは、よくこんなアドバイスをするそうだ。「成功することを考えなくていい。まずは失敗しないと」と。

「技術で仕上がりは変わる」という考えはブレない。しかし、ガラス作業にはリスクがつきものだ。そこで諦めるか、失敗してでも突き進むか、ここが技術力を養う分岐点となる。同社は、多くの施工動画を公開しているが、これには「(無理と言われている修復を)諦めないでほしい」という思いも込められているそうだ。


◆新たな異名誕生に期待!

数多くの経験を積んだ今でも「ガラスはごまかしが効かないから一番難しい」という思いは変わらない。そして「これだけ失敗しているから、いつどこで何があるか分からない。でも一生懸命やります」という謙虚な気持ちを持ちながら、ガラスと向き合う毎日だ。

施工時の失敗は、ガラスだけでなく、自信や自らの名にも大きな“キズ”をつけるかもしれない。しかし、技術力があれば、それもいつかキレイに消えるということを、平井氏の話を聞いて感じた。失敗がもたらした技術と施工への姿勢で、今後も新たな異名が次々と生まれるかもしれない。



“日本一失敗した男”が、車のガラス「リペア職人」に! まるで魔法のような施工を支えるのは…

《カーケアプラス編集部》

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