未熟運転での死亡ひき逃げ、少年被告の異例となる2回目の裁判員裁判が開始

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2015年8月、運転技術を有していないのに兵庫県尼崎市内でワゴン車を運転し、死亡ひき逃げ事件を起こしたとして危険運転致死の罪に問われている17歳の少年に対する2度目の裁判員裁判の初公判が17日、大阪地裁で開かれた。

問題の事故は2015年8月13日の午前9時20分ごろ発生している。尼崎市大庄北1丁目付近の市道(車線区別のない幅員約5mの直線区間)を蛇行しながら走行していたワゴン車が前走していた自転車に追突。クルマは自転車に乗っていた80歳の男性をひきずりながら約50mに渡って走行し、道路左側のフェンスに突っ込む状態で停止。男性は全身強打でまもなく死亡した。

クルマを運転していたのは大阪府豊中市内に在住する16歳(当時)の少年で、免許取得年齢以下のために無免許状態。直後の時点では「こんなに大きいクルマを運転するのは初めてだった」と供述していたが、後の調べで事故当日に初めてクルマを運転したことがわかった。進路を維持することもできず、パニック状態の中で事故を起こしていた。

少年は家裁の審判で「刑事処分相当」とされ、逆送(検察官送致)が決定したことから、検察は危険運転罪の適用基準である「未熟運転(進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為)」に該当するものとして、少年を危険運転致死などの罪で起訴。大阪地裁で開かれた1回目の裁判員裁判では、裁判所に対して懲役4年以上8年以下の不定期刑を求めていたが、地裁は「少年の行為は刑事処分が相当なほど反社会的とは言えず、保護処分によって改善する余地が大きい」として、大阪家裁へ送致する決定を行っていた。

しかし、大阪家裁の森岡孝介裁判長は「クルマを運転してみたいという、被告少年の安易な動機が事故につながり、尊い命が失われた悪質な事件。一審の裁判員裁判では"反社会性は高くない"と判断していたが、これは是認できず、刑事処分が相当と考える」と判断し、2回目となる逆送(検察官送致)を決定。これを受けて大阪地検は少年を起訴し、極めて異例となる2回目の裁判員裁判が行われることとなった。裁判員と裁判官は1回目の裁判員裁判とは変更し、別の人物が担当することになっている。

17日に開かれた初公判で、被告の少年は起訴内容を容認。被告弁護側は「少年の心は未熟で事故の危険性を認識しておらず、心の内面を改善するには少年院での処遇が必要」と主張。1回目の公判結果を覆した家裁については「刑事処分相当とした家裁の決定は裁量を超えており違法だ」として、公訴棄却(裁判打ち切り)も併せて求めた。

これに対して検察側は「被告の少年は遵法意識に欠けており、保護処分とする特段の理由もない」として、1回目と同様に刑事処分の適用を求めている。

《石田真一》

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