増加するインバウンドに、バスや鉄道のターミナルはどう対応するか。1日に500台の高速バスが発着する博多バスターミナルは、多言語映像通訳サービス「みえる通訳」を10月6日に導入。1か月後に見えた効果やエピソード、課題を教えてくれた。
「ひと月30~40回はこのツールに頼っている感じ。通訳とすぐにつながって、行きたいところや乗り方などを専門通訳スタッフが訳してくれる。土地柄、韓国人観光客が多い。そのほとんどが湯布院をめざす。その次に英語圏の人たちが続く」
「みえる通訳」は、アイ・ティー・エックス(ノジマグループ)が運営する多言語映像通訳サービス。タブレットやスマートフォンを使い、ワンタッチで通訳オペレーターにつなぐことで現場接客をサポートする。
日本語と外国語が話せる専門通訳スタッフと、スマホやタブレットを通して対面でやりとりができ、微妙なニュアンスや機械では判別が難しい内容も、会話スタイルでコミュニケーションが図れる。通訳コールセンターは英・中・韓・タイ・ロシアの5か国語に24時間365日対応する。
最もニーズがある英語、中国、韓国語およびロシア語に加え、2013年7月のビザ解禁以降、日本各地でタイ人観光客が「急激に増加している」ということから、「タイ語対応サービスを業界初導入した」(同社)。
今回の多言語映像通訳サービスを導入したことで、ターミナル側の課題も見えてきたという。アイ・ティー・エックスが「バスの乗車ルールや、禁止事項の説明が明確になり、ガイドブックにない場所なども正確に案内できるようになった」といえば、博多バスターミナルの現場はこう話していた。
「このツールを導入することで、インバウンドの問い合わせに確実に答えられるようにはなったけど、こんどは『聞いたことにいろいろ答えてくれる』と外国人観光客が窓口に押し寄せて、行列ができる事態に。今後は、窓口や対応スタッフの不足解消が課題かも」
こうした多言語コミュニケーションサービスは、鉄道の現場でも始まった。京急電鉄は、緊急時を想定し、登録した定型文などを英語、中国語、韓国語に変換し音声放送・アプリ配信する「おもてなしガイドアナウンス放送アプリ」の実証実験を品川駅と羽田空港国際線ターミナル駅で11月28日から開始。インバウンド向け多言語アナウンスの有効性を検証する。