【ITS世界会議16】三菱重工業、日本企業最多の3カ所に出展---GPSによる新型ERPにも期待

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三菱重工業が出展したシンガポールのパビリオン
  • 三菱重工業が出展したシンガポールのパビリオン
  • シンガポールで使われている現行のERP車載器。第一世代(左)と第二世代
  • 現行ERPのシステム概要
  • ジャパンパビリオンに出展した三菱重工業のブース
  • ベトナムで導入が予定されている日本型ETCの海外版車載器。5.8GHz帯を使う
  • プリペイド式電子タグとして使われているマレーシアの「RFID」
  • ゼロックスと三菱重工業の提携についての告知を目的としたブース

三菱重工業は今年3月、シンガポール陸上交通局から5億5600万シンガポールドル(約420億円)で、GPSによる次世代型電子道路課金システム(ERP)を受注。同社はメルボルン・コンベンションセンターで開催中の第23回ITS世界会議に出展し、自社の技術力をアピールした。

同社が出展したのは、日本のITS関連28企業・団体が出展するジャパンパビリオンとシンガポール・ブース、さらに今年新たに提携を発表したゼロックスとの共同ブースの3カ所。日本企業でここまで幅広く出展していたのは同社だけだ。

このうち、シンガポールに出展していたのは、言うまでもなくシンガポールでの実績が大きいからに他ならない。同社は現行のERPシステム用車載器を大量に受注するなど、これまで着実にシンガポールでの実績を重ねてきた。

しかし、今回の出展でGPSによるERPについての言及は一切なし。新聞報道もされたこの件に関して触れていいないのは、詳細がまだ決定していないこともあるが、「シンガポールとの契約上、先行して独自の発表はできない」(三菱重工業 ITSビジネスユニット 権田哲平氏)状況にあるようだ。

明らかになっている概略によると、このサービスではGPSを使うことで通過ゲートなしに車両位置を特定でき、広域通信インフラを併用により様々な課金ポイントの設置や走行距離ごとの課金が可能となる。さらに時間帯ごとに課金内容を変更して、交通量に応じて柔軟に料金設定できる。インフラ整備に費用をあまりかけず、料金の変動による交通量の最適化が図れるメリットがあるわけだ。

ただ、GPSは位置情報の誤差も発生し、特に高層ビルが建ち並ぶシンガポールでは“アーバンキャニオン”と呼ばれる、いわゆるビル陰がつきまとう。こうした事象に対して、「補正電波を併用するか、はたまたGPS受信だけで対応可能なのか、その解決が当面の課題」(権田氏)なのだという。

2019年、ITS世界会議はシンガポールで開催される予定になっており、シンガポールとしてはその時の“目玉”としたい考え。同社としては「それまでに何らかの解決を図らないといけないが、まだ詳細は決まっていない」(権田氏)状況にある。これらの背景が詳細な発表を控える要因になっていると思われる。

こうした事情もあり、同社の出展は現行で展開中の製品が中心。シンガポールブースでは現行ERPのサービス内容を紹介するとともに第一世代、第二世代のERP用車載器を展示。ジャパンパビリオンでは、現在進めている料金収受システムを中心としたITSインフラを紹介すると共に、ベトナムで運用が開始される予定で日本と同じ5.8GHz帯を使ったETCや、マレーシアで使われているプリペイド型の「RFID」を出展した。

一方、ゼロックスとの共同出展では、「提携そのものを広く告知する場であって、ITS関連のインフラを得意とするゼロックスとの協業によるスケールメリットの拡大に期待。具体的なものは何も決まっていない」(同社ITS営業部 小磯英一氏)という。それだけにパネルもイメージを象ったもので、ブース内にはコーヒーメーカーがあるのみだった。今後の両社の発展に期待したいところだ。

《会田肇》

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