日本人はとかく“最果て”という言葉には惹かれるようだ。かく言う私もその一人。今回は日本海とオホーツク海に面する北海道・稚内へ出掛け、様々な「日本の最北端」を拾い上げてきた。
訪れたのは9月下旬。空港に降り立つとひんやりとした空気が身を包む。この日の最高気温は20度と、東京との気温差は5度以上もあった。さすがは北緯45度40分の街だ。同緯度付近ある世界の都市をグーグルアースで探してみると、カナダ・オタワ(45度41分)、イタリア・ミラノ(45度47分) 、セルビア・ベオグラード(44度80分)、ルーマニア・ブカレスト(44度43分)などがある。最北端の地である宗谷岬では43km先にあるサハリン(旧樺太)を見ることもできる。
当たり前だが、稚内にある施設はすべてが「日本最北端」だ。マクドナルド、ロッテリア、すき家、そしてコンビニもファミレスも、ここにある施設はすべて日本最北端となる。ここで興味深いのはコンビニやファミレスの大手チェーンが一切出店していないことだ。中でもコンビニは地元資本の「セイコーマート」があるのみで、セブンイレブンやファミリーマート、ローソンといった大手はどこもこの地へは出店していない。
現地のセイコーマートでこの件について訊ねると、「人口が少なくてマーケットが小さいこともある上に、端っこにあることで流通の効率が上がらないことも他社が出店してこない要因だと思う」と話していた。ちなみに、セイコーマートは稚内市内に16店舗展開しており、市内を巡ると至る所にその看板を見ることができる。稚内では「コンビニ=セイコーマート」なのだ。
ファミレスもすかいらーく、デニーズ、ロイヤルホスト等といった大手チェーンは出店していない。ここで唯一出店していたのは「ヴィクトリアステーション」。ステーキ系ファミレスのBigBoyの系列店で北海道内で展開する。メニューもほぼBigBoyと同じ内容で、サラダバーやスープ、カレー等の食べ放題プランがあるのも同じだ。
「JR稚内」も日本最北端の鉄道駅だ。JR北海道HPによれば開業は1928年(昭和3年)で、宗谷線開業当初の稚内駅は現在の南稚内駅だったという。しかし、当時日本の統治下にあった南樺太や、利尻/礼文島へ渡る連絡船に乗るには不便ということで、1939年に現在の稚内駅(当時は「稚内港」駅)まで延長された。現在の駅舎は2012年に竣工した4代目で、この中には最北端の「道の駅」、映画館も併設されている。
面白いところでは風力発電。これも最北端の風力発電だ。稚内市街地から少し離れるて見えてくる丘陵地帯には必ずというほど風力発電の施設が見える。稚内は周囲が海に囲まれていることもあって、年間平均風速は7m/s、風速10m/s以上の日が90日を超す(出典:稚内市HP)ことから風力発電がふさわしいとされたようだ。
稚内市HPによれば、1998年に市内最初の風力発電施設が建設され、現在では74基、発電総量7万6355kWの風車が稼働中で、この発電量は稚内市の電力需要の85%に相当するという。
そして、ドライブでは欠かせないガソリンスタンド。最北端にあるのは出光石油系の「安田石油」。宗谷岬のすぐ隣にあるスタンドで、ここで給油するとなんと手作りの貝殻キーホルダーと、最北端給油証明書がもらえる。貝殻の裏側には“交通安全”と年号が、証明書の裏にも給油した日のスタンプが押してある。旅の記念にぜひ頂いておくといい。