周囲の環境に溶け込んで移動するモビリティ…ヤマハ06GEN

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ヤマハ 06GEN
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ヤマハ発動機が大三島で発表した、コンセプトモデル「GEN」シリーズの最新作『05GEN』、『06GEN』。どちらも「人と人、人と場所の縁を結ぶモビリティ」として登場した。06GENは複数の乗客をゆっくり運ぶ、公共性の高いモビリティだ。

06GENは、電動ゴルフカートのコンポーネントを使って仕立てられたコンセプトモビリティ。デザイン開発はヤマハ発動機デザイン本部デザイン推進部先行デザイングループが担当した。ゴルフカートはもともと開放的なキャビンを持ち、低速度で走行するという特徴を備えている。「そこにどういった付加価値を与えられるのか? というのがデザインのポイントでした」と述懐するのは、デザイナーのジョン・ヒョンチョル氏。

開発チームでは『縁側』というテーマを掲げ、大三島で公開するコンセプトモデルとしてデザインをまとめることになった。「幸運だったのは、もともと考えていたコンセプトが大三島にもマッチするということでした」という。

縁側コンセプトのメリットは「走行中でも、歩く人となにげない会話を続けられるのが特徴です」と説明するのは、企画を担当した小川岳大 主事。こうしたアイデアを盛り込んでまとめられた06GENは「動く縁側」として左右非対称のボディと、ラウンジのようなシートレイアウトを持つデザインになった。ボートと同じ防水素材で覆われたベンチシートは、低速度だから可能なレイアウト。高めのヒップポイントは縁側に腰掛ける雰囲気と、歩く人に目線高を近づける効果をもたらしている。

床面は、これもボートのデッキと同じチーク材を採用。大きく開口した左側面から乗り込んだ乗客をタイヤからオーバーハングした右舷へと誘うために、床面がカーブしてそのまま右舷の背もたれに連続させている。奥行き感を強調しつつ、ゆったりしたイメージをもたらす演出だ。凹凸のあるルーフは、高層階から見下ろした際に車両を見つけやすいよう、意図的に異物感を持たせるアイデア。太陽光を乱反射して、風景にアクセントを加える。またその支柱は左右非対称で、乗降する左舷はハンドグリップとしての用途を考慮。有機的なカーブで金属の冷たい印象を和らげようという発想は05GENと共通している。

ちなみに車体前後でゆるやかな弧を描くレリーフの模様は、水の流れや日本庭園の砂紋をイメージしたものだとか。つまりこれも縁側というテーマに呼応したディテールというわけだ。また、06GENはモビリティ以外の機能も備えている。それは「駐車時には風景に溶け込んで、歩く人がひと休みするベンチとして使える」ということだ。公共的な移動手段であると同時に、移動の足を止めて休息する公共施設でもある。この動態と静態のどちらでも存在価値を備えるということも、室内と屋外というふたつの世界にまたがる縁側の特徴を反映したものと言えそうだ。

大三島での試乗会では、伊東豊雄建築ミュージアムの敷地内を巡回した。試乗した伊東豊雄氏は「酒でも飲みながら乗りたいね」と上機嫌。06GENは、法的にはゴルフカートと同じ扱いとなり、公道を走行することはできない。 しかしたとえば、観光地での限られたエリア内や、特例で認めた島を周回する観光ルートなどで走らせることが想定できる。そうした場所で風景に溶け込み、乗り合わせた人同士や歩く人との交流を深めることで、移動体験に付加価値を与えるモビリティなのだ。

《古庄 速人》

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