【BMW M2クーペ 試乗】BMWヘリテージモデルと比較される、エッセンスが凝縮された1台…中村孝仁

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BMW M2クーペ
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『2シリーズクーペ』が誕生した時、それは伝説の名車『2002』が引き合いに出された。そして『M2』が誕生すると、今度はE30系の初代『M3』が引き合いに出されるなど、新しいM2クーペはBMWのエッセンスが詰まった1台としてデビューした。

既存の2シリーズクーペと諸元を比較してみると、ボディサイズが異なることがわかる。特に全幅はM2クーペが85mmも幅広い1855mmとされ、全長でも5mm、ホイールベースでも5mm、それぞれ大きい。そしてタイヤサイズもそれに伴って、フロントに245/35R19、リアに265/35R19とグッと大きくなる。

つい先日ドイツの自動車雑誌のテスト記事を読んだが、このクルマはタイトなコーナが続くようなサーキットでは、何と兄貴分の『M4』よりも速いラップタイムを刻むというから恐れ入る。冒頭、2シリーズクーペやこのM2が、2002あるいはE30 M3を引き合いに出して紹介されたと書いたが、本当の意味で引き合いに出すべきはE36のM3だと思う。何故ならばE30時代は4気筒エンジンを搭載していたのに対し、M2と同じ直6を搭載したのはE36になってからのことだったからだ。

もっとも、当時は同じ直6でもNA。だが今はツインスクロールターボである。エンジン自体は現行M3やM4と基本的には同じものだが、チューニングはややマイルドにされたもの。とはいえ、370ps/6500rpm、465Nm/1400~5560rpmは、パワフル以外の何物でもない。とりわけ最大トルクは僅か1400rpmからほぼ全域で最大トルクを発揮し、さらにオーバーブースト時には500Nmに達するとてつもない力を発揮する。

以前『M5』に試乗した時も、その計り知れないパフォーマンスに畏怖の念すら抱いたが、その性格やアクセルの開け方ひとつでいかようにもコントロールでき、通常の流れに乗って走ろうと思えば、十分に快適でおとなしく、まさに飼い慣らされた猫状態でおとなしく走ることもできる。

例によって走行モードはコンフォート、スポーツ、スポーツ+の3段階に切り替え可能だが、少なくとも街中でコンフォートとスポーツを切り替えてみても、ほとんどその差を感じないほどの変化でしかなく、どちらをチョイスしても剛性感が高く、ドシッとした乗り味は、決して不快な突き上げ感や硬さをもたらさない快適なものだった。因みに剛性感を出す目的で、リアアクスルはシャシーに直接ボルトで剛結されているそうだが、それでこの快適な乗り味を実現しているのには恐れ入る。

前述したように最大トルクはたったの1400rpmで発揮されてしまうから、昔のターボのように背中を蹴飛ばされたような唐突なトルクの立ち上がりは皆無で、そうした意味ではまさにNA風の極めてプログレッシブな加速感を持っていて、およそターボを意識することはまずないと思う。

トランスミッションは7速のDCT。ステップATの出来が非常に良くなった今でも、スポーツドライビングにDCTとステップATのどちらが優れているかといえば、やはりDCTに軍配が上がる。運転を楽しむという意味でMTを好む人は当然ながら多いだろうが、今やそれはかなりコアなファンのためでしかないような印象があり、オールマイティーに使おうと思ったら、やはりATモードがチョイスできるDCTが圧倒的に有利である。

『ボルボ』が直6エンジンの生産を止めてしまったから、直6を量産モデルに展開するのは今やBMWだけになった。そしていろいろ不都合はあるのかもしれないが、改めて直6エンジンのスムーズさと澱みない回転フィールは、他を持って代えることのできない最良のレシプロエンジンと感じる。

と、少なくとも走る、曲がる、止まるといったクルマの要素を積み上げていくと、M2はドライビングマシンとしては最高の出来と思える1台である。そこに不満は何もない。770万円という価格も、M4と比較すれば十分にリーズナブルであるのだが、どうしても気になったのがあまりにそっけないインテリアの作り。何か、もう少しアピールするものが欲しかったと感じてしまった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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