【アルファロメオ ジュリエッタ 試乗】スペックを超えた愉しさこそアルファの真髄…森口将之

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アルファロメオ ジュリエッタ QV
  • アルファロメオ ジュリエッタ QV
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クアドリフォリオ・ヴェルデ(QV)。いまから90年以上前、第1次世界大戦直後の1923年に、勝利を呼び込む幸運のお守りとして、4つ葉のクローバーがアルファ・ロメオのレーシングカーに描かれたのが起源だという。

戦後になっても伝統は引き継がれ、『ジュリア・スプリントGTA』のような、レース出場を前提とした市販車にも与えられた。さらにその名は『164』、『145』などの高性能モデルに使われるようになった。

『ジュリエッタQV』は、日本で買える新車のアルファで、その伝統を受け継ぐ唯一の存在。戦後生まれのホットハッチとは歴史の重みが違うのだ。

エンジンがそれを証明している。他のジュリエッタが1.4リットル直列4気筒ターボのマルチエアを搭載するのに対し、「QV」にはミッドシップスポーツ『4C』と同じ、1750ccの直噴ターボがおごられている。240psの最高出力まで共通だ。

あえて1.75リットルと書かず、「1750」と記したのにもわけがある。この数字もまた、第2次大戦前の1929年に生まれたスポーツカーの名作「6C1750」や、1970年代の「1750ベルリーナ/GTV」などに由来しているからだ。

しかもさすがはアルファ、こういったスペックを超えた愉しさを、乗り手にもたらしてくれる。アクセルペダルを踏んだ瞬間にグォッと唸り、ブォーンという響きとともに豪快に加速していく様子は、僕もかつて愛車にしていた、ウェーバー・キャブレターを2連装していた時代のアルファ・ツインカムを思い出させるのだ。

もちろん加速そのものも、240psもあるだけあって豪快そのもの。QVという栄光の称号、1750という伝統の数字を受け継いだことが実感できる。フロントフェンダーに掲げられた4つ葉は、やっぱり伊達ではない。

それでいて、その気になればファミリーユースにも対応できる懐の深さを備えているところが、ジュリエッタQVの好ましさだ。

伝統の盾をセンターに据えたスポーツカー風の顔つき、リアドアオープナーをピラーに隠したクーペライクなサイドビュー、筆記体の“g”を横にしたようなグラフィックが印象的なテールランプなど、アルファならではのディテールを随所にちりばめたボディは、身長170cmの僕なら後席にも余裕をもって乗れ、後方には奥行きも深さも十分な荷室を備えるのだ。

サスペンションは硬めだが、同時に乗った弟分の『MiTo(ミト)』に比べると、随所でしなやかさを感じる。リアサスペンションにマルチリンク式をおごっただけあって、上級車であることをさまざまなシーンで教えてくれるのだ。

でもグリルのバーやドアミラーをガンメタで揃えたエクステリアや、安直にシルバーやピアノブラックに頼らずホンモノの粋を追求したインテリア、手触りからも色合いからも手作りのぬくもりを感じるレザーシートは、ファミリーユースにしておくのが忍びないような妖艶な世界を作り出している。

日本人の多くはこういう出で立ちを見て、自分には似合わないというネガな考えから入ってしまうようだ。でもイタリア車に乗る人との付き合いも多い自分が感じるのは、この国のクルマは乗り手を育ててくれるということだ。もちろんそれは、ドライビングテクニックからファッションセンスまで多岐に渡る。だから自信を持って選び、乗りながらカッコ良くなってほしいと思っている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

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《森口将之》

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