ブランド体験を象徴するナビゲーション、 アウディ と レクサス の最新モデルを試す

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レクサス RXの12.3インチディスプレイ
  • レクサス RXの12.3インチディスプレイ
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名だたるプレミアムブランドのなかでも、アウディとレクサスは、ナビゲーション体験の先進性に敏感なブランドだ。今回、両者の最新モデルのひとつであるスポーツクーペのアウディ『TT』と上級SUVのレクサス『RX』を借り出した。かたや「バーチャルコックピット」と呼ばれる新ユーザーインターフェースを、かたや12.3インチの超ワイドディスプレイを、と革新的な新機軸を採用して、話題を呼んでいる。

これらのナビゲーション機能をメーカーとともに開発したのが、アイシンAW。アイシンAWといえば、ビルトイン型ナビゲーションの製造メーカーとしてトップシェアを持ち、2011年からはスマートフォン向けのアプリとして「NAVIelite(ナビエリート)」を発表するなど、ナビゲーション領域のハード/ソフトの両面で新しい試みをおこなっているメーカーだ。

今回、アウディおよびレクサスという2台のナビゲーションインプレッションを通じて、自動車とIT/テレマティクス体験の最新トレンドを追ってみたい。

◆12.3インチの大型ディスプレイをいかに使いこなすか…レクサス RX

2015年10月に新型が登場したレクサスの上級SUV『RX』。車内空間でもっともその存在を主張しているのは、ダッシュボードにせり出している12.3インチの大型ワイドディスプレイだ。

カーナビは普及して久しいが、アフターマーケットのカーナビがスマートフォンに押されて苦戦する中で、純正カーナビは逆にその存在感を増している。レクサスの新型RXでは、12.3インチのワイドディスプレイがダッシュボード中央に鎮座し、その画面全体に地図が表示される迫力のナビシステムが初めて採用された。この大画面は見ていて「気持ちいい」という表現がぴったりくる。交差点やインターチェンジの拡大図を表示しても地図画面に窮屈さがなく広々としているのが実にいい。

大型のワイドディスプレイそのものは、レクサスでは以前から使用されていたのを知っている人も多いだろう。このRXも先代は現行モデルと同じ12.3インチのワイドディスプレイを採用していた。ただ、先代と現行モデルで異なるのは、その“表現力”だ。

どういうことかというと、先代までの12.3インチワイドディスプレイは、画面の左側、つまり縦横比が4:3になる部分までは地図を出すが、それ以外のスペースは車両情報表示用に分かれていた。この仕様だと、たとえば高速道路の標示などが入ったとき、地図のスペースが小さくなってしまっていた。このように表示領域が実質的に2分割されていた先代モデルに対して、現行機では全画面での地図描画が実現されている。大きく左右に広がる地図画面はインパクト十分で、1画面のみでの表示になったことで見やすさも先代モデルとは一線を画している。

表示領域が広がったことによる処理部分の負荷は大きくなっているはずだが、それにしてもこのナビの操作感は素晴らしい。広く表示される地図をスクロールしてもその軽快感は変わらず、通信待ちが発生するスマートフォンとは全く比較にならない。

レクサスのカーナビは、見た目も操作方法もすでにスタイルができあがっている。レクサスを乗り継いでいくユーザーも多いのでモデルチェンジを機にがらっと変えるわけにはいかない。しかし、全く同じでは高い評価は得られない。レクサス向けのナビ開発は、新しい機能やインターフェースを取り込みながらも、いかに従来ユーザーに違和感なく使ってもらえるか、という絶妙な職人芸も要求される。

◆ITデバイスでありながら不具合が許されない開発は検証の精度がモノを言う

そのほかのトピックとしては、レクサスのライン装着ナビとしては初めて「VICSワイド」に標準で対応した。FM-VICSだけで渋滞回避ができるようになり(レクサスはもともと通信モジュールのDCMが内蔵されるためオンデマンドVICSが標準だが)、豪雨などの災害案内にもできるようになった。また、RXはオプションでリアシートにもディスプレイを設置できるが、12.3インチディスプレイ、インパネに表示するマルチインフォメーションディスプレイ、そしてリアシート用と、3系統を出力しており、これもブランドとして初めてのことだ。

ライバルの高級車ブランドもこぞって高機能なカーナビを標準搭載していく中で、どのような進化を遂げていくのか、興味は尽きないところだ。

◆バーチャルコックピットでナビゲーションを実現させる…アウディ TT

日本で早くから発達したドメスティックなナビゲーションの使いやすさや特徴を引き継ぎながら、究極まで進化を遂げたのがRXならば、それとはまったく異なる思想、つまりITガジェット的な視点から開発されたのがアウディ『TT』のナビと言える。

そのTTの運転席に座った人は、誰でもインパネの斬新さに度肝を抜かれるだろう。スピードメーターもタコメーターもすべて巨大なディスプレイに表示する「バーチャルコックピット」が採用されているのだ。そのメーターが画面隅にズームアウトしてカーナビ画面が表示されるさまはまるでSF映画のようだ。

◆Googleマップそのまんまに見えるナビ画面、実は…

アウディTTのカーナビはGoogleマップが採用されているということで話題になっている。しかし、このGoogleマップ、クルマの道案内に利用したことがある人ならわかるが、必ずしも日本の交通法規に遵守ふと疑問が沸くのは「アウディTTのカーナビはGoogleマップではないのか?」ということ。地図の描画や航空写真との切り替え、地球全体までズームアウトできる仕様はGoogleマップ、あるいはGoogleアースそのものだ。

しかし、見た目はGoogleマップであっても、その内実はまったく異なる。ナビゲーションの開発に携わった関係者によれば、じつは日本仕様に最適化されたナビゲーションなのだという。Googleからは描画モジュールが提供されているというが、経路を引くための道路ネットワークのデータベースは国内の地図会社によるものがローカルに保存されている。

つまり、見た目はGoogleマップであっても、カーナビとしての実質的な中身はカーナビゲーション専用のデータになっているということだ。また、アウディTTは通信モジュールを搭載していつでもネットに繋がるコネクテッド・カーだが、カーナビのデータベースに関してはローカルで保存されている。その意味でも、Googleマップのナビ機能とはまったく異なる。

アウディに限らず、欧州メーカーは他社ブランドとの差別化に対する意識が非常に強い。カーナビについても細部に至るまで統一された高級感を重視するようだ。例えば地図を真上から見た、いわゆる2Dマップ表示では、普通のカーナビは文字通り2Dのデータを使用する。一方、遠くまで見渡せる3Dマップは高さデータを含んだ別の地図なので、切り替えの際は画面がパッと変わる。アウディはそれを嫌い、2Dマップに見える表示でも高さデータまで含んだ3Dのデータを使い、遠くまで見渡せる3Dマップ表示へシームレスに移行できるようになっている。

ブランドのこだわりが投影されるナビゲーション開発。ITガジェットが層であるように、自動車まわりのITも開発の速度はますますペースアップしていくことだろう。だが、レクサスは従来のナビゲーションの延長線上に新機軸を取り入れ、アウディはまったくの新機軸の裏側に実は従来のナビ技術を取り込んだ。同じプレミアムブランドといえども、アウディとレクサスのナビの取材を通じてそのアプローチの違いを感じさせられた。

《山田正昭》

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