バンコクモーターショーではここ数年、BMWがトップを切ってプレスカンファレンスを開催する。そのBMWがプレスカンファレンスで見慣れないクルマがサプライズとして登場した。そのクルマが1950年代に生産された二人乗りの乗用車『BMW・イセッタ』である。
このクルマはイタリアのイソ・イセッタをBMWがライセンス生産した二人乗りの乗用車で、戦後、BMWが乗用車の販売台数を伸ばすきっかけとなった記念すべきクルマでもある。BMWのプレスカンファレンスは、この「イセッタ300」にBMWタイランドのCEOマティアス・プファルツ氏が乗って現れるところからスタートした。
プレスカンファレンスに登場したイセッタは、カラフルなイエローとホワイトの2トーンカラー。思わずその可愛いらしいデザインに頬が緩んでしまう。エンジンはリア車軸前に置かれ、単気筒4ストローク、排気量は298cc。オリジナルは後ろ二輪で駆動するが、デファレンシャルギアはなく直結。リアトレッドを48cmと極端に狭くすることで内輪差の影響を最小限にとどめていた。
が、バンコクモーターショーに登場したイセッタは、後輪はどう見ても一輪しかない。果たしてこんなイセッタはあるのか。調べてみると、どうやらイギリス向けで存在していたことがわかった。当時、イギリスには三輪車に対して税制面で優遇していたこともあり、もともとリアのトレッドが狭かったイセッタを一輪に改良して販売していたのだ。
イギリス向けらしく右ハンドル仕様となっており、冷蔵庫みたいに開くドアもヒンジが右側。左の助手席側から乗り降りする。マティアス氏もこちら側から降りてステージ上に現れたというわけだ。BMWは3月7日に創業100周年を迎えており、イセッタは「THE NEXT 100 YEARS」の記念イベントという意味合いもあり披露された。