アナタはどのようにしてエンジンオイルを交換しているだろうか? クルマを買ったディーラーに依頼している? 近所のガソリンスタンドや自動車用品量販店で手軽に済ませている? なかには「オイル交換は自分でやる!」という昔ながらの人もいるだろう。いずれにしても、その作業には少なくとも20分はかかるはず。
ところが、もしもこの面倒なオイル交換がわずか90秒で終わるとしたら、どうだろう? そんな画期的なシステム“ネクセル(NEXCEL)”をイギリスのカストロールが開発し、いま自動車関係者の間で話題となり始めている。
システムの概要は、いたってシンプル。まずはエンジンオイルを専用のカートリッジ内に封入。エンジンルーム内に設置したカートリッジの受け皿とオイルパンの間をパイプで結ぶとともに、オイルの往き来を制御する電動式オイルポンプをその途中に設けるというのが、ネクセルの基本構成だ。
このことから想像できるように、ネクセルはあらかじめその搭載を前提に設計されたクルマでしか用いることができない。つまり、アナタの愛車にいますぐ取り付けることは、残念ながら不可能なのである。
もっとも、カストロールはネクセルが既存の量産車に装着可能なことを独自に検証し、まったく問題がないことを確認している。エンジンルーム内の取り付け場所については、バッテリーをトランクルームに移設し、これによって空いたスペースを利用しているケースが多いようだ。さらに、ネクセルは世界で24台だけが販売されるサーキット走行専用モデルのアストンマーティン『ヴァルカン』に搭載されて商品化されることがすでに決まっており、こちらも様々な実証実験を通じてその実用性が確認されている。
ところで、ネクセルを装着することで受けられる恩恵は、単にオイル交換が90秒で終わることだけには留まらない。たとえば、前述したオイルポンプによりオイルパン内のオイル量を適切にコントロールできるため、フリンクションロスを低減させたり、冷間時にはオイルの循環量を抑えるなどして素早く暖機させることもできるのだ。いずれも、燃費の改善やCO2排出量の低減に効果があることはいうまでもない。
しかも、その後の開発を通じて、ネクセルには様々な可能性があることが判明しているという。リポートの後編では、この点についてさらに掘り下げることにしよう。