【フォード フォーカス 試乗】デザインDNAを担い、新世代に広げる重要な存在…千葉匠

試乗記 輸入車
フォード フォーカス Sport+ Ecoboost
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「踏んだだけ加速する」「切っただけ曲がる」という誠実な運転感覚は欧州系フォード車の伝統だ。1.5リットルのダウンサイジングターボを得た新型『フォーカス』も例外ではない。低回転域からでもリニアに加速してくれるし、ステアリングを握る掌に路面を感じながらコーナリングできる。さすがに『フィエスタ』ほどの軽快感はないけれど、フォーカスの落ち着いた身のこなしはむしろフォードらしい美点だとも思う。

試乗を終え、あらためてその外観を見て考えた。フォーカスこそが「フォード一家の嫡男ではないか?」。外観の最大の変更点はフロントマスクだ。従来型はバンパーの低い位置に大きな台形のグリルを構えていたが、フィエスタと同様に、それを持ち上げた。これが新世代の「フォード顔」。しかし注目したいのは、そこではない。

リヤフェンダーの肩口を見てほしい。ドアハンドルの上からリヤコンビランプへ、盛り上がったラインがある。英語圏のカーデザイン用語で「ハンチライン」と呼ばれるラインだ。「ハンチ」とは動物の尻ないしは後脚。後輪の存在感や力強さを表現するために、50年代から使われてきた手法である。

フォーカスでは従来型からあったハンチラインだが、実はそれが現行フォード車の多くに採用されている。SUVの『エコスポーツ』や『クーガ』からスポーツカーの『マスタング』まで、日本には未導入の『モンデオ』(セダン)や『エッジ』(SUV)、『S-MAX』(ミニバン)も含めて、表現の強さに差はあれどもハンチラインを入れているのだ。

フォードは2011年に発表した北米向けセダンの『フュージョン』(モンデオの姉妹車)から、「ワン・フォード・デザイン・DNA」と呼ぶデザイン方針を掲げて、仕向地を問わずグローバルに一貫したデザインを展開している。新世代「フォード顔」の台形グリルはそのひとつ。もうひとつの大事な要素がハンチラインだ。

従来型フォーカスは「ワン・フォード・デザイン・DNA」より前に、欧州フォードが「キネティック・デザイン」を標榜していた時代に開発されたもの。しかし、そこにあったハンチラインは新世代のフォード各車にDNAとして受け継がれた。それほどフォーカスは、フォードにとって大事な車種ということだ。

フォードらしい誠実な運転感覚だけでなく、デザイン面でもフォードのDNAを代表し、それを新世代に広げていく役割を持つのがフォーカスというクルマ。まさに「フォードの嫡男」と言ってよいと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーランスのデザイン ジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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