【フィアット 500X 試乗】乗り味はだいぶプリミティブ…中村孝仁

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フィアット 500X
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フィアットブランドとして最新かつ最高の安全装備を搭載したという『500X』。しかし、その走りの味付けはかなりプリミティブなものだった。

1.4リットル、マルチエアターボと6速デュアルクラッチトランスミッションの組み合わせ(つまりはFWD車だ)。そしてプラットフォームはジープ『レネゲード』と共有するもの。しかも、過去に試乗した同じドライブトレーンの組み合わせは決してプリミティブな印象を持たなかったから、今回のモデルの個体差かもしれないが、少なくとも印象としてはかなりプリミティブなものだった。

まずは良かった印象の方からお話をしよう。それはエンジンだ。このマルチエア、吸気側のバルブを油圧ピストンで押す仕組みを持っているもので、カムシャフトは排気側に一つだけ。スロットルバルブを開いた状態にして、バルブのリフト量と開閉時間をコントロールすることで、制御を行う。そのスムーズかつ力強いフィールは、最新鋭のライバルと比較しても全く引けを取ることはなく、イメージ的には同じカテゴリーのトップクラスのエンジンとほぼ互角である。

ハンドリングもなかなかである。元々クルマの性格上、地上高が高く重心高も高いから、いわゆるワインディングでのハンドリングは苦手と言っても良いのだが、そんな印象は皆無。なかなか痛快である。ドライブモードセレクターがついていて、オート、スポーツ、トラクションの3つから選べる。日常的にはオートもしくはスポーツのどちらか。トラクションは滑りやすい路面を想定したモードで、セルフロッキングディファレンシャルの働きを電子的に実現する機能を持っていたり、ブレーキの制御を行ってくれる。スポーツモードにすればステアリングの操舵力が重みを増し、同時にトランスミッションは高回転までギアを引っ張る。

冒頭でプリミティブと評したのはそのトランスミッションと、ブレーキの性能だ。まずトランスミッション。フィアット系の6速DCTは過去にも乗ったことがあるが、このクルマのものに関していえば、とりわけ発進時の繋ぎ方に問題があるのと、低速走行時にクラッチの断続をうまくやってくれないのが走りをスポイルしてしまった。もっともこれは、過去に乗った同じドライブトレーンのクルマでこのような症状がなかったので、固体特有のものと判断したい。一方でブレーキ。これはいわゆるカックンブレーキの症状を呈する。スムーズに止めようと、軽く踏んでやるとほとんど何の反応も示さず、ある踏み代まで到達すると突然ガンと止まる。駐車場で、特にフロント側をいっぱいまでつけたい時などは不便であった。

このクルマ、いわゆるアイドリングストップ機能がついている。だから停車すればたいていの場合でエンジンが停止する。このような場合、最新のクルマではほとんどのケースでヒルスタートアシストがついているのだが、このクルマにはその設定がない。おまけにブレーキは電子パーキングだから、アクセルを踏みながらパーキングを解除なんていうことはうまくやれない。必然的に坂道発進ではずるずると後ろに後退しながら発信することになるが、実は再始動が少しおっとりとしているため、ズルズルいく量も結構多く、ドキッとすることがある。急な坂道ではアイドルストップを切った方が賢明だった。まさにマニュアルミッション車で、パーキングブレーキを使わずに坂道を発進するのと同じである。

最後は乗り心地。一言で評するなら、ゴムまりがサスペンションの代わりをしている印象というか、空気圧を入れ過ぎたタイヤのクルマに乗っている印象で、急激な入力にボディがガツンと反応することはない代わりに、常に揺れていてフラット感に欠ける。だから、長距離を乗ると疲労感が出てしまう。今回の試乗は400kmほどで、このうちの半分以上の距離を一度に乗ったのだが、結構な疲労感だった。

安全装備について一つ触れておこう。このクルマ、レーンキープアシストがついていて、走行中に写真から逸脱しそうになると、ステアリングを自動で切って車線内に戻そうとするのだが、その介入はかなり強力で、グイッという感じでステアリングを切る。どうせ介入するのならこのくらいやってもらった方が良い。そらくこの手のステアリングを持つクルマの中では介入度合いは強い方であった。

ちょっと印象が良くなかったので、改めて別な500Xに乗ってみたい。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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