ブラックホールから出る規則的パターンの光変動を初めて捉える…JAXAなど

宇宙 科学

宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは、ブラックホール近傍から出る規則的なパターンを持つ光の変動を可視光で初めて捉えることに成功したと発表した。

今回の研究成果は、JAXA、京都大学、理化学研究所、広島大学が発表した。

X線連星は、ブラックホールまたは中性子星と、普通の星がお互いの周りを回っている連星系。このような天体では、伴星から角運動量を持つガスが主星に向かって流れ込み、降着円盤というガス円盤が形成され、その降着円盤を通してガスが主星に落ち込むと考えられている。

降着円盤の状態は、質量降着率という、単位時間あたりに主星にどのくらいのガスが落ち込むかという物理量によって決まると考えられている。天体の明るさは、この質量降着率に比例する。

X線連星の中でも、不定期にアウトバースト(急激な増光現象)を起こす天体をX線新星という。そのひとつである「はくちょう座V404星」は、正確に距離がわかっているブラックホールの中では、地球に最も近いブラックホールを主星に持つ天体で、過去の観測から、アウトバースト中にX線で激しい光度変動を示すことが知られていた。

この天体はこれまで約十数年おきに一度という割合でアウトバーストを起こしており、以前のアウトバーストが1989年であったため、2000年頃に再び増光すると見られていたものの、その時期にアウトバーストの兆候は見られなかった。しかし、2015年6月中旬から7月初旬にかけて、この天体はアウトバーストを起こし、世界中の観測天文学者の関心を集めた。

はくちょう座V404星の今回のアウトバーストは、最初X線バンドでNASAのSwift衛星のBurst Alert Telescope (BAT)検出器によって発見され、後に国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」船外実験プラットフォームに搭載された全天X線監視装置(MAXI)によってもX線バンドでの増光が確認された。

発見から2分30秒後には、研究チームが可視光での増光を発見し、世界各地のプロ・アマチュア天文家の協力による大規模な連続測光観測が、京都大学主導で開始された。今回の研究に使用したのは、これらの可視光とX線の観測データ。

今回、以前から京大を中心に活動してきた国際変光星観測ネットワークVSNET team とTAOS team(台湾の観測チーム)、IKI(ロシア宇宙科学研究所)を通して世界中で行われた大規模な国際協力可視測光観測によって、ブラックホールX線新星のアウトバーストにおいて過去最大となる可視測光データを得た。

この結果、アウトバーストの最初から最後まで断続的に、規則的なパターンを持つ激しい短時間変動が見えていることがわかった。また、Swift衛星によって得られたX線の観測データと可視光の観測データを比較、解析することで、この可視光での変動が、これまでX線領域でしか観測されたことのない、アウトバースト時にブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象を表すものであるということが判明した。これは、ブラックホール近傍から出る光の変動を可視光で初めて捉えることに成功したことになる。

また、このような光度変動がこれまで、他のX線連星で同じ種類の変動が観測されていたときの光度よりも10分の1以下の、非常に光度が低い時期にも起こっていたことも明らかになった。

今回の研究成果は、ブラックホール近傍から出る光の変動であると考えられている激しい規則的な光度変動を、人間が感知できる波長域のる可視光で初めて発見したこと。もうひとつが、今回の研究によって、これまで考えられてきたよりも10分の1以下と非常に低い光度のときにも、ブラックホール近傍から放射されるエネルギーの短時間変動現象が起こっていたことが明らかになったこと。

今後は、矮新星についての観測的研究を行い、次にX線新星のアウトバーストが起こったときに矮新星での研究成果を応用できるよう準備を進める。

さらに、今後数年以内に本格稼働予定の京都大学岡山3.8m望遠鏡や、2月に打ち上げ予定のAstro-Hを用いたX線連星の観測も視野に入れ、次にX線新星のアウトバーストが起こったときには、今回のアウトバーストの観測で実現しなかった分光観測など、口径の大きな望遠鏡の利点を生かした観測も行い、ブラックホール周囲の超強力重力下で極限物理の解明を目指す。
《レスポンス編集部》

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