【メルセデスベンツ S300h 試乗】航続距離1540km以上。これが何とエントリーモデル…中村孝仁

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メルセデスベンツ S300h
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エンジンルームを開くとまさしく城壁で囲まれたように、エンジンが中央に鎮座する。確かにここまで囲ってしまえば、音は出にくい。これ、新しいメルセデスベンツ『S300h』のエンジンルームだ。

そうはいっても、外の対策ではなく、これはあくまでも室内。だから、エンジンをかけて室外に出てみると、意外にそのエンジン音は大きく響いている。まあ、搭載しているのがディーゼルエンジンだから致し方ない。末尾に「h」の文字がつくことで、今後はこれがハイブリッドを意味するモデルとなるらしい。少なくともSクラスにおいてはプラグインハイブリッドを除けば、末尾「h」で統一された。

それにしても、ディーゼルとハイブリッドの組み合わせはこれが日本初である。ある意味で究極のエコカーとしての素養を備えているモデルなのだが、メルセデスはそれにあえて挑戦した。それが九州最南端から東京六本木まで、1540kmを無給油で走り切ろうというチャレンジである。結果は見事完走。そればかりじゃない、燃料は何と15%も余っており、ここから先は計算値となるが、そのまま走れば仙台あたりまで行けたというから驚きである。最良値は25km/リットル以上を記録したそうだ。

断っておくが車重2080kg(ベース車)のモデルが記録した燃費である。まさしく驚異であろう。 しかもこれ、Sクラスのエントリーモデルである。というわけでお値段、ほんの少しだが1000万円を切る998万円だ。

ざっとメカニズムの説明をすると、エンジンは2.2リットル直4ターボディーゼル。すでに『CLS』や『Cクラス』に搭載されているのと同じエンジンである。これに出力27psのモーターと、リチウムイオンバッテリーが組み合わされる。トランスミッションは7速ATだ。

ドライブトレーンこそ、はっきり言えばしょぼい。エントリーモデルなのだから仕方がない。とは言うものの、室内に乗り込めばいつものSクラスである。果たしてどこまでがオプションで、どこまでが標準装備かさっぱりわからなかったが、その佇まいはさすがメルセデスの最高峰モデルだけのことはあり、豪華で卒がない。それにいたって快適である。そういえば、エアマチックサスペンションも標準装備である。

早速エンジン始動…と言っても温まっていたせいか、いきなり電気で「ready」である。さすがにいつエンジンがかかったかわからないとは言わない。ディーゼルが目覚めれば、それは明確にわかる。だが、僅かなエンジンの揺れとかすかなサウンドは、犠牲を払ったと言えるレベルのものではない。勿論、日ごろからS550などに慣れ親しんでいる人にとって見れば、これはウルサイのかもしれないが、僕にとってこのレベルは十分に許容の範囲。まあ、どの目線で話をするかによって違うが、例えメルセデスのSクラスであっても、僕には許容の範囲だと思えた。

西湘バイパスという道路はその名の通り、バイパスであって、高速道路ではない。一般有料道路というのだそうである。だからなのか、合流は一時停止を求められる。ところが、クルマの流れは高速道路と何ら変わらないスピード(みんな速度違反だ)。だから、合流に際しては必然的にフルスロットルが求められる。合法的かどうかは別として、こうしないと危険だから。

S300hの加速は、まあこれならいいかなというレベル。普通に使うには何ら不満がなく、システム総トルク750Nmは伊達ではない。このフル加速の際のエンジン音はどうかというと、さすが城壁のごとく囲まれたレイアウトが功を奏して、ほとんど室内に届くことはない。この音のレベルなら文句は出まい。エンジン単体の最大トルクが500Nm、モーターで250Nmがハーモニーを奏でれば、少なくとも日本の国情におけるスピード域の加速感には不満はないのである。

ここでもS550なら…という囁きが少し聞こえるが、あっちはあっち、こっちはこっちなのだから、比較しない方がいい。もし多少とも引っかかる点があるのなら、パワフルなV8で、ハイオクガソリンを要求する高性能を選べばよい。こちらは減税対象で、必要十分なパワーのディーゼルハイブリッドで70リットルのタンクを満たせば、九州まで行ける安い軽油なのだ…という反論も聞こえる。

エントリーモデルというのはどうしても聞こえが悪い。しかし、積極的に選ぶ動機はこのクルマの場合十分にある。金がふんだんにあっても僕ならこいつを選ぶ。何となくいい人になった気分になれる。勿論排ガスはクリーンだ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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