世界遺産登録を前に新造船就航…黒島天主堂と本土・相浦を結ぶフェリー[フォトレポート]

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相浦港に到着した「フェリーくろしま」。真新しい船体からクルマや人が次々と降りてくる
  • 相浦港に到着した「フェリーくろしま」。真新しい船体からクルマや人が次々と降りてくる
  • 完成から110年以上が経ったいまも、御影石「黒島石」の基礎や伊万里焼のタイル、40万個にもおよぶレンガ、「リブ・ヴォルド」と呼ばれる“こうもり天井”、差し込む自然光に色を添えるステンドグラスなどがいまも残っている
  • 客室の前寄りにはカーペットが敷かれたフロアがあり、航路モニターを見ながら寝転がれる
  • 2016年、世界遺産登録が期待される「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」。その構成遺産のひとつ、黒島天主堂へは、黒島港から歩いて20分ほど
  • “かからの葉”が添えられた名物「ふくれ饅頭」を手渡してくれた地元の人は、「小さな島のなかばクルマでドライブすっともよかし、ジョギングすっともよか。サイクリングば愉しむ人もよう見るよ。信号がないから交差点とか注意して走らなければならんばってんね」と教えてくれた
  • 客室の前寄りにはカーペットが敷かれたフロアがあり、航路モニターを見ながら寝転がれる
  • 相浦港に到着した「フェリーくろしま」。真新しい船体からクルマや人が次々と降りてくる
  • 相浦港を発った「フェリーくろしま」。車両積載フロアは貨物用や建設用のトラックで混み合う

2016年、世界遺産登録が期待される「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」。その構成遺産のひとつ、黒島天主堂へ。この黒島と本土側の相浦港を結ぶ黒島旅客船航路に、バリアフリー設備や積載車両フロアを拡充させた新造船「フェリーくろしま」が就航した(写真32枚)。

五島列島、平戸島、本土の間に挟まれ、九十九島の沖合いに浮かぶ小さな島、黒島。フランス人のマルマン神父が自ら設計し、木材とレンガによる美しい曲線と直線で結ばれた3層構造の黒島天主堂ができあがったのは1902(明治35)年。完成から110年以上が経ったいまも、御影石「黒島石」の基礎や伊万里焼のタイル、40万個にもおよぶレンガ、「リブ・ヴォルド」と呼ばれる“こうもり天井”、差し込む自然光に色を添えるステンドグラスなどがいまも残っている。

この黒島と相浦を結ぶ「黒島~相浦航路(17km、片道720円)」に、新たに就航した「フェリーくろしま」は、老朽化した先代「ニューフェリーくろしま」の定期検査時期や、くろしま天主堂の世界遺産登録を前にしてつくられた。

2015年10月から就航した新造船は、積載量アップやバリアフリー拡充が図られた。旧船が積める普通乗用車の数が8台だったのを、新船は普通乗用車10台(または2トントラック2台+4トントラック4台)+軽自動車2台に拡大。旅客定員は20名減の130名としながら、客室・トイレのバリアフリーや、自動ドア付き多目的トイレなどを充実させた。

新船のカーペット席の壁には航路を示すモニタ(運航情報提供表示装置)が設置され、所要50分のルートがひと目でわかる。カーペット敷きの床に寝転がる地元客に混じり、船の道筋をモニタで見ながら、足を伸ばしてくつろいでいると、途中、高島港に寄港するさいに1発、黒島港に着岸する直前に2発の汽笛が船内に響く。

船体後部からクルマや客が乗り降りするので、接岸するさいは、船体をぐるっと回して後進で岸壁に付ける。乗降デッキで船と陸が結ばれると、すぐにトラックや自家用車が船から下り、島の山間へと消えていった。

高島と本土を結ぶ唯一の輸送手段であるこの船は、食料や生活必需品のほか、黒島に1か所だけあるガソリンスタンドへの燃料、し尿・ごみなど、あらゆるものを運ぶ。“かからの葉”が添えられた名物「ふくれ饅頭」を手渡してくれた地元の人は、「小さな島のなかばクルマでドライブすっともよかし、ジョギングすっともよか。サイクリングば愉しむ人もよう見るよ。信号がないから交差点とか注意して走らなければならんばってんね」と教えてくれた。

島民の9割がカトリック信徒といわれる黒島をあとにし、フェリーで再び相浦港へ戻る。返しの黒島行き便に乗り込むおじいちゃんおばあちゃんは「病院に行ってきてね、こいから帰るところ」と笑う。船の到着にあわせるように、佐世保市交通局の佐世保駅行きバスが近づいてきた。鉄道好きは、港から歩いて5分ほどの相浦駅から佐世保駅へ、松浦鉄道(MR)に揺られる30分もいい。

《レスポンス編集部》

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