工学院大学は10月にオーストラリアで開催されたソーラーカーレース「ブリヂストン ワールドソーラーチャレンジ2015(WSC2015)」に参戦。クラス2位(準優勝)という好成績を収め、その結果報告会を11月11日に開催した。
WSC2015 には「チャレンジャークラス」、「クルーザークラス」そして「アドベンチャークラス」という3つのクラスが設けられている。工学院大学はそのうち2013年大会で新設された「クルーザークラス」にエントリー。このクラスには12ヶ国から12チームが参加。特徴は走行タイムのほかに搭乗者数、プラグイン充電量、実用性という4つの項目で採点されるという点だ。
同校では2014年に発表されたレギュレーションを分析し、走行スピード重視の作戦が有利と判断。減点覚悟で搭乗者をドライバーのみとして、走行タイムを短縮しようという策を採用した。レギュレーションでは「複数人乗車が可能なキャビン空間」は義務づけられているものの複数人乗車は必須ではなく、搭乗者数に応じてポイントが変動する仕組みになっている。
レースでは2位に92分という大きなタイム差をつけ、クラストップでゴール。しかし採点の結果、総合ポイントではわずかな差でアイントホーフェン大学(オランダ)に逆転され、準優勝という結果に終わった。
しかしこのタイムは、主催者による根拠不明の「車体にふらつきが見られるため、リタイヤしてトレーラーで運ぶか、最高時速を70km/hに抑えて走行せよ」というペナルティを科された結果によるもので、これがなければ2位とのタイム差はさらに拡大し、クラス優勝の獲得も夢ではなかったはずだ。
ペナルティに困惑しつつもチームは70km/h走行を受け入れ、随伴車両から走行風景を撮影した映像を主催者に提出。なんら問題なく安定走行が続けられることを訴えた。その結果、速度制限は解除されたものの、挽回及ばずクラス2位に甘んじることとなった。
アイントホーフェン大学の車両にはエアコンやオーディオが装備され、乗用車らしい快適性が審査員の心証をよくし、ポイントを稼げるものになっていたのは事実。しかし工学院大学の車両『OWL(アウル)』にも、またチームの作戦にもレギュレーションから逸脱した部分はなく、その解釈と運用に翻弄されてしまった形だ。
キャプテンを務めた機械工学専攻修士2年の大原聡晃さんは、圧倒的なスピードを実証しながらも優勝できなかったことに落胆しつつ「やるべきことをやった。悔いはない」と、グッド・ルーザーとして振る舞う。
また監督を務めた機械システム工学科の濱根洋人准教授は、学生たちを讃えつつ「クルーザークラスは(車両コンセプトの)幅が広く、学生の教材としてはすごくいい。これからも工学院大学としてオンリーワンの車を作ってくれるはず」と次回以降への意欲を語る。
次回2017年大会のレギュレーションが公開されるのは2016年6月だが、参戦車両の開発スケジュールについて尋ねると「実はゴールした翌日には、学生からデザイン案が出されてきました」と濱根准教授。具体的な開発はレギュレーション公開後となるが、次回も意欲的なデザインの車両を見られそうだ。