2016年度の世界遺産登録が期待される「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」。その構成遺産のひとつ、「平戸の聖地と集落(中江ノ島)」は、禁教時代の景観をとどめ「かくれキリシタン」によって守られ崇敬されている。この“聖地”をクルーズする船の試験運航に乗船した。
中江ノ島は、長崎県平戸市下中野町に属する、長さ400m、幅50mの無人島。禁教時代初期、平戸藩によってキリシタン処刑が行われた地として伝えられ、平戸島西海岸のかくれキリシタンが、岩からしみ出す聖水を採取(お水取り)する重要な聖地と位置づけられている。
この中江ノ島の周囲をめぐるクルーズ船の試験運航が、2016年5月の本運航をめざしてすすめられている。11月中旬、遊漁船免許を取得した漁船「第十八舘浦丸」に乗り、生月島(いきつきしま)の南東端にある舘浦港(平戸市生月町舘浦)から、中江ノ島、生月大橋(県道42号)、平戸市春日町へと上陸した。
舘浦港を出た第十八舘浦丸は、エンジン音を一定に保ちながら、港から約4km東にある中江ノ島に20分ほどで到着。速度を緩め、添乗ガイドによるキリシタン処刑の歴史や、お水取りの現状などを聞きながら、島の全容を間近に見る。
ブルルンとエンジン音が響くと、中江ノ島から離れ、船は「日本一の連続トラス橋」といわれる生月大橋の下を行く。生月島と九州本土をつなげたこの生月大橋は、主要梁部800m、中央径間支間400mで、3径間連続トラス橋としては世界一の長さを誇る。
今回の試験運航では、中江ノ島と同じ構成遺産に含まれる「平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳)」の現場、春日集落へ上陸した。このとき、春日の小さな港の水深がじゅうぶんでないため、岸壁に船を寄せることが難しいといった事実もわかった。
舘浦港から中江ノ島、生月大橋、春日集落をめぐるクルーズの所要時間は約1時間。平戸観光協会の松瀬千秋氏は「中江ノ島クルーズは、来年5月から予約制で運航を予定している。予算はひとり3000円前後となる見込み。春日に着岸できないという可能性もあるので、春日集落は沖から見学して、再び舘浦港に戻るコースになるかもしれない」と話していた。