25日、スーパーフォーミュラ(SF)の鈴鹿テストが2日間の日程で始まった。来季から使用されるヨコハマ(YH)製ワンメイクタイヤのテストが主眼で、海外からの大物選手登場もあるなど、注目度の高いテストとなっている。
今季最終戦が2週間と少し前に行なわれたばかりの鈴鹿サーキットに、アジア最高峰フォーミュラレース参戦の11チームが再び集結した。今回のテスト、お題目的には「ルーキードライバーテスト」と「エンジンメーカーテスト」ということになっているが、実状としては、来季から使用されるYHタイヤのテストがメインディッシュである。
これまでも少数の台数でのYHタイヤ先行開発テストは数回行われているが、全チーム合同での走行機会は初。来季に向け重要かつ貴重なテストであり、全11チーム20台のマシンが鈴鹿に姿を現した(シーズン中は1カーだったチーム無限が2台で臨戦のため、全体で1台増)。
2日間での走行予定選手は20名以上。タイヤ中心のテストとあって、大半のチームが今季レギュラードライバーを起用しているが、いくつかの陣営では今季参戦していなかったドライバーや、海外からやって来た新顔ドライバー等も起用している。なかでも最注目の存在は、ホンダエンジン搭載のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGから登場のストフェル・バンドーン。今季、F1直下の登竜門シリーズ「GP2」を圧倒的な強さで制した23歳のベルギー出身選手で、F1マクラーレン・ホンダのリザーブドライバーでもある。
初日は午前と午後、2時間半ずつの走行セッション。午前のセッションは9時に開始された。天候は曇り、路面コンディションはドライ。セッション後半にはコースの一部で雨という情報もあったが、走行に大きな影響を及ぼすレベルではなかったと推察される。
セッション前半の段階で、走行した大半の選手が1分38~39秒台のラップタイムを記録した。テストなのでそれぞれのメニュー内容が読めない面はあるが、先代ワンメイクタイヤのブリヂストンで記録された今季最終戦の予選最速タイムが1分37秒963ということを考えれば、YH装着の走行でも概ね同レベルのスピードが確保されていると考えてよさそうである。
コースオフ車両回収のための赤旗中断が多く、セッションは約10分延長されて終わることとなったが、終盤にはジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(#19 LENOVO TEAM IMPUL/トヨタ)が唯一1分38秒を切り、1分37秒831をマーク。最終戦の予選最速タイム超えを果たしている。このオリベイラのタイムが午前最速で、2番手はホンダ勢最速となる山本尚貴(#16 TEAM 無限)の1分38秒331。以下、10位までが1分39秒を切った。
テストということで興味深い試みも見られており、石浦宏明が今季ドライバーズチャンピオンを獲得したP.MU/CERUMO・INGING(エンジンはトヨタ)などは、石浦と国本雄資がシーズン中とはマシンを乗り換えて走ったりもしている。
注目のバンドーンは、週末にリザーブドライバーを務めるF1のアブダビGP(GP2併催)がある都合上、今回のテスト参加は初日のみの予定。シーズン中は野尻智紀がドライブしていたDANDELIONの#40号車で走り、満足に周回を重ねられなかった状況もあったようだが、20周を走ってベストタイム1分39秒904、午前の全体17位だった(鈴鹿をレースカーで走るのは初)。
ストフェル・バンドーンのコメント
「SFのマシン(SF14)はとてもクイックだと感じた。GP2のマシンと比べると、エンジンを含めていろいろな意味で違いは大きい。直線ではGP2より少し遅いのかもしれないが、SFはダウンフォースが大きく、この鈴鹿の特にセクター1(中高速S字コーナー中心区間)では素晴らしい速さだ」
ホンダとの関係等から、2016年のSF参戦濃厚との噂もあるバンドーンだが、それについては「来季F1(のレギュラー)ということは今のところないので、そのなかでいろいろなことを考えた場合、SF参戦というのはいい選択肢だと思っている。こうして今日、実際にマシンとチーム、シリーズ(の実態)を自分自身で体験できることは、来季に向けて実にいい機会だとも考えている」と前向きなコメント。
ランチブレイクに実施された会見には、チーム無限からテスト参加中の、やはり今季GP2参戦選手であるリッチー・スタナウェイも出席したが、彼も来季SF参戦にはかなり前向きな印象。GP2から直接のF1昇格が難しくなっている昨今、GP2からSF、という進路の取り方が増えてくる可能性もありそうだ。
テストは今日午後(1時30分~4時)、そして明日午後(1~4時)と続き、当初予定で計8時間の走行を重ねるスケジュール。一般公開もされており、鈴鹿サーキットの遊園地入場料(大人1700円)のみでパドックエリアにもアクセスできる。
なお、SFは今季まで「全日本選手権スーパーフォーミュラ」が正式名称だったが、来季からは「全日本スーパーフォーミュラ選手権」に微変更されることが決まっており、今回のテストから新名称が使われている。