ただでさえ可愛い『500』。それがSUVの細マッチョになったのだから、女心に響かないわけがない。ボリュームアップしたボディながら、デザインは4枚のドアをうまくまとめて家庭臭を微塵も感じさせないし、タイヤ周辺に黒をあしらい、全体を大柄に見せすぎない配慮もされている。なによりアゴにあしらわれたガードがタフさをさりげなく演出していて、絶対、ここをがつがつぶつけるような道は走らないとわかっていても、包容力にうっとりするのが女心というものである。さらにインテリア。造形といいカラーといい、手触りといい、とってつけた感がないのがイタリア車ならではだと思う。昔、イタリアの友人が言っていたっけ。「イタリアはアートの国なのよ。日常生活のなかでアートを身に着けていくのよ」と。わかるなあ。こうして工業デザインを目の当たりにすると、にじみ出る素性の違いをつきつけられる。そんなイタリアの美学がそこかしこから噴出しているというのに、走りはちょっと意外だった。硬いのである。イタリアらしいしっとりしなやかな雰囲気はどこへ行ったのか。握ったハンドルから返ってくる反力。座ったシート。さらに走らせたときのサスペンションのしならなさ。タイヤは18インチだが、ためしに17インチのポップスターに乗ってみるも印象は変わらない。イタリアン=しなやかと刷り込まれている身としては、意外さをなかなか受け入れられないで困る。これは初期の硬さなのか。数百キロも走ったら、少しはしなやかなサスペンションになるのかしらん。ただ、搭載された9ATのなめらかさは気持ちい。このサイズに9速か!と、のけぞる思いだが、なめらかでしなやかで上品なのである。6速のDCTもスポーティ感があるものの、自分が選ぶなら大人な9速でリッチに走りたいともくろんでいる。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★オススメ度:★★★★岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。