【東京モーターショー15】コンセプトは継承と進化、スーパーカブに込められたデザイナーの想いとは

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本田技術研究所 二輪R&Dセンターデザイン開発室の渡邊徳丸氏
  • 本田技術研究所 二輪R&Dセンターデザイン開発室の渡邊徳丸氏
  • 本田技術研究所 二輪R&Dセンターデザイン開発室の渡邊徳丸氏
  • 第19回カフェカブミーティングin青山
  • 第19回カフェカブミーティングin青山に展示された初代スーパーカブ
  • ホンダ EV カブ
  • ホンダ EV-カブ
  • ホンダ スーパー カブ

ホンダは東京モーターショー2015で、2種類の『スーパーカブ』をワールドプレミアする。

1台が、モーターとバッテリーを搭載した『EV カブ』で、2009年開催の東京モーターショーで初出展したEV カブの進化版。もう1台が『スーパー カブ』のコンセプトモデル。独自の車体レイアウトを継承しつつ、デザインを見直すとともに環境性能を向上させた次世代エンジンを搭載しているのが特徴だ。

デザインを手がけたのは本田技術研究所 二輪R&Dセンターデザイン開発室の渡邊徳丸氏。10月24日、25日に開催された「第19回 カフェカブミーティング in 青山」にて、2台の開発秘話を聞いた。

◆EVとエンジン、違う動力源で実現した“ほぼ”同じスタイリング

2台を見比べると、モーターとエンジンという動力源の違いがあるものの、そのスタイリングは非常に似通っている。渡邊氏は「(搭載するものの中で)1番大きいコンポーネントがバッテリー。その大きいコンポーネントをどこに配置するかというのは、レイアウトの中で一つの大きなポイントになる」と話す。

「コミューターとしての最適な位置がどこかということを考えた結果、前後ホイールのほぼ中央、かつ低いところにバッテリーを配置した。これが結果的に、通常モデルのエンジンが搭載される位置とほぼ同じ配置になった。パワーユニットが違っても、基本のパッケージングレイアウト、カブのパッケージングレイアウトというのは継承している」(渡邊氏)

2009年のモデルよりも、バッテリーの幅を3分の2ほどに小さくすることに成功したことで実現したスタイリング。幅が狭くなったことで、足つき性が向上したことも進化のポイントだと渡邊氏はいう。

◆コンセプトは継承と進化、カブらしさにエモーショナルな要素をプラス

スーパーカブはその登場以来、機能に裏打ちされた独自のデザインを一貫して継承し続けている。カブを真横から眺めたときに、レッグシールド上部からリアフェンダー上部をつなぐ“S”のラインは、そのデザインを説明する上で明文化されているほど重要となるライン。渡邊氏は今回、2台をデザインする上で、なるべくデザインをしないことを心がけたと話す。

「デザイナーとは、新しいものを作る職業だが、スーパーカブをデザインするときはとにかく加飾を一切することなく削りとるようにカタチを作り込んだ。料理でいうと、あまり調味料や味付けをせずに、素材の味を生かす感覚に近い。初代をデザインされた木村讓三郎さんも、初代を振り返り、奇をてらわなかったからあの普遍的なデザインができたとおっしゃっている」(渡邊氏)

普遍的なデザインを継承する一方、進化となる要素はどこにあるのだろうか。渡邊氏は先ほどの“S”のラインを独特の例えで表現する。

「“S”のラインを引いたとき、人の背骨もSを描いているので、レッグシートの前の部分からフレームまでを背中、エンジンの上の部分をウエストとして、リアフェンダーの上をヒップと位置付けている。このSラインを真上から覗くと、初代とかつてのスーパーカブではその幅がほぼ一定となっていることがわかる」

「フレームは同じ幅でカバーも同じ幅ということで、理にかなった無駄のないカタチになっているのだが、今回は(真上から見た状態で)ウエスト部分をくびれさせ、ヒップに張りをもたせる工夫をした。飾りといえば飾りだが、人に訴えかけるエモーショナルな要素も織り込むということで、やりすぎると外国の女性みたいにグラマラスになってしまうので、ちょうど程よい塩梅になるように作り込んだ。この部分をモーターショーで見てほしい」(渡邊氏)

◆カブのデザイナーとして込められた“想い”とは

最後に渡邊氏は、自身の考える「継承と進化」について話してくれた。

「私がスーパーカブをデザインするときに念頭に置いているのは、今までと違うカブを作るということじゃなくて、より“カブらしい”カブを作るということ。それは、カブの本質を追求していくことで、昔のカブをただなぞるということではない。バッテリーとモーターのような最新の技術を用いて、お客さんが求めているものを具現化することで、これからも支持されていくカブを目指していく」(渡邊氏)

幅広い人に親しまれてきた独自のパッケージを継承しながらも、EVとエンジン、その両方の技術を、よりカスタマーに受け入れられる方向に進化させた今回の2台。スタイリングも、これぞ新しいスーパーカブと言われるように進化させていきたいと渡邊氏は話す。

ここまで完成度が高いと市販化を期待したくなるが、渡邊氏は「今はまだコンセプト段階。作り手としてはこう考えているが、実際にお客様はどう考えているのか色々なことを学ばなければいけない。この提案がみなさまに喜ばれるものなのか、社会に貢献できるものなのかということを、これから深く考えていく」と述べた。

《橋本 隆志》

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