1919年から現代に至るまで、独創的かつ革新性に富んだプロダクトを生み出してきたシトロエン。
その哲学は今、どのように表現されるのか。フランクフルトモーターショー15の会場で、デザイン・ディレクターのアレクサンドル・マルヴァール氏に話を聞く機会を得た。
----:シトロエンにとっての“デザイン”とは何か、教えてください。
アレクサンドル・マルヴァール氏:詳しく話すと非常に長くなってしまいますが、キーワードで言い表しましょう。オプティミスティック(楽観的)、ヒューマン、そしてスマート。この3つのワードが、現在のシトロエンにおけるデザインのガイドラインです。
すべてのプロジェクトで、ヒューマニティ(人間的)で共感できるデザインを目指しています。巧妙なマーケティング手法やエンジニアリングに加えて、楽しく暖かみのあるデザインを心がけています。
また過去のシトロエンはどの車種にも、それぞれ特別な雰囲気が備わっていました。現在はそれをそのまま再現するのではなく、同じような感覚を持つよう再プロデュースしています。これが現在、市場で主流となっているデザインとの違いといえるでしょう。
見渡すと、どのメーカーもアグレッシブでスポーティなデザインを追求しています。しかしシトロエンには、そのような表現をするDNAはありません。猛獣のように大きく口を開けたフロントグリルのデザインはシトロエンには存在しないのです。
もうひとつ重要なのは、モダンであること。家具のデザインやiPhoneなどに見られるグラフィックとしての強力なイメージなどからインスピレーションを得て、シンプルで使いやすいデザインを追求しています。これが、見てすぐに「シトロエンだ」とわかってもらえる要素になります。
そしてすべてのモデルに家族のような統一性を持たせたいと考えています。これはいくつものクローンを生み出すということではありません。人間の子供は、父親と母親のクローンではありません。似ているところもありますが、見た目も性格も両親とは異なっています。それと同じことですね。
たとえば、ヘッドランプを2段重ねにするというのはブランドを示すシグネチャーですが、それぞれのモデルに合わせて表現しています。
これからのPSA(プジョー・シトロエン・グループ)のストラテジーは、3つのブランドの個性をもっと明確にすることです。プジョーのイメージはすでに浸透しています。しかしシトロエンとDSはまだ分離されたばかりなので、それぞれの個性をもっと強く表現しなければいけません。3つの個性が互いに補い合うことで、強力なグループとなるのです。