【アストンマーティン DB9 GT 試乗】11年を経て、似て非なるクルマに進化…中村孝仁

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アストンマーティン DB9 GT
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『DB9』。アストンマーチンの今を作ったある意味歴史的名車である。すべての現行アストンマーティンは、ここから始まった。すでにデビューから11年。新たに登場したGTは、デビュー当初とは似て非なるクルマに変貌していた。

その骨格をVHプラットフォームという。VHはヴァーティカル・ホリゾンタールの略。今ではアルミに変えてカーボンを使ったジェネレーション4まで存在する。もちろんDB9に関しては、初代と変わらぬアルミ製のVHプラットフォームを使っているのだが、今やその性能は初代と全く異なるものへと変貌を遂げているのに、改めて驚かされた。

初めてこのクルマに乗ったのは、デビューしたての試乗会でのこと。フランスはニースで行われたその試乗会では、トップエンドに至るまでそのパフォーマンスを堪能した。当時としては最先端のパフォーマンスを有していた。

当時も今もパワーユニットはコスワースが関与した6リットルV12。初期型で450bhpだったそのパフォーマンスは、GTでは今や540bhpにまで引き上げられている。しかも基本的な成り立ちこそ変わっていないものの、初期エンジンの面影はほとんどとどめないほどに改良されているのだという。そればかりではない。オリジナルのDB9も剛性は従来よりも20%強化され、しかも15kg軽量化されている。

ブレーキはすべてのDB9にカーボンセラミックが奢られている。そしてサスペンションは、今では3ステージのアダプティブダンピングサスペンションが装備される。またトランスミッションはこちらもタッチトロニック2に進化している。ただし、基本的にはZF製のフルオートマチックであることに変わりはない。エンジンから太いトルクチューブで結ばれ、リアディファレンシャル直前にレイアウトされるトランスアクスル方式を採る。

とまあ、成り立ちは以上のようなモデルであるが、実は2012年に大掛かりなマイナーチェンジを受けて以降のDB9に試乗していなかった。だから、まさしく今浦島状態で新しいGTに試乗したので、冒頭の似て非なる…という表現になったのである。事実、デザインに関してはこの11年間でほとんど変わっていない。細かい部分では変わっているし、GTに関していえばディフューザーがつくリアエンドのデザインなどはオリジナルのDB9と異なっている。

この10年でスポーツカーの進化は目覚ましく、それはまるでスマホやノートPCの世界を見るように日々進化している。そんなわけだからマイチェン前のDB9は大きく重い、昔ながらのNAV12エンジンを搭載したスポーツカーというよりも、まさしくグランツーリスモとしての存在というのが、僕の中でのDB9位置づけだった。がしかし、今回サーキットに持ち込んだ最新かつ最後のDB9となるGTを走らせてみて、改めてこのクルマがGTと名付けられているものの、リアルスポーツカーであることを思い知らされた。

さすがにオーバーシュートすると、マニュアルモードで乗っているつもりでも、自動的にシフトアップしてしまう。トランスミッションなどはサーキット向きではないが、それはエンジン保護の観点からは適切であるし、GT、即ちグランツーリスモとしても正しい設定だということは十分にわかっていても、サーキットとなると、おいおい、まだレブリミットじゃないじゃん?みたいな思いが沸々と立ち上る。

それにしてもコーナリングは抜群にスムーズだし、何よりブレーキの効きが素晴らしい。マイチェン前のDB9では、高速コーナリングで、その当時最新だったライバルと比較して、ボディ剛性の形状を感じたものだったが、今はそんなことは微塵もない。実は直前にGT12に試乗してしまった関係で、サウンドに関しては実に大人しいと感じてしまったが、その咆哮はまさしく野獣一匹という印象で、フェラーリやランボルギーニのV12とは一味も二味も異なるアストンマーチン独特のサウンドである。

前述した最新かつ最後のDB9という意味はすでにアストンマーチンがアナウンスしているように、後継車となる『DB11』がティザー発表されて2016年には投入される関係で、DB9の寿命はあと1年。その最後を飾るリリースがこのGTであるという意味だ。もっとも、このGTをベースにした150台限定の「ボンド・エディション」もリリースされたから、まだ次があるのかもしれないが…。

■5つ星評価
パッケージング :---
インテリア居住性:---
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 :★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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