440億円の巨額を投資したボッシュ新研究センター、その設立の狙い

自動車 ビジネス 企業動向
ボッシュのレニンゲン研究センター
  • ボッシュのレニンゲン研究センター
  • MEMS
  • MEMSの市場予測
  • ボッシュが研究しているソリッドステートセル
  • ボッシュが研究しているソリッドステートセル
  • ソリッドステートセルによって50kWhの大容量電池を190kgに抑えることができるという
  • 農業用ロボット
  • ドライバーサポートシステム

10月14日より正式な稼働を開始したボッシュのレニンゲン研究センター。シュツットガルトから車で1時間弱の郊外に立地し、その敷地面積は100へクタール(おおよそ東京ドーム21個分)に及ぶ。本館や研究棟など合わせた建物は14施設あり、1700名の従業員がここで研究開発に従事する。

ボッシュはこの新研究センターのために3億1000万ユーロ(440億円)の巨額を投じた。シュツットガルト近辺に点在していた研究施設を統合し、世界25カ国94箇所におよぶ同社の研究施設の統括する中枢機能を併せ持つこの研究センターにはどのような特徴があるのか。

ボッシュでは、この研究センターを“リサーチ・キャンパス”と呼び、また“ボッシュ版のスタンフォード”と位置づける。 すなわち、大学のようにコミュニケーションを促進し、スタートアップ起業との連携を積極的に促すような開放的なマインドセットを涵養する空間づくりに意が払われている。

ワークスペースの設計に当たっては、社内のリサーチャーにヒアリングをおこない、創造性を高める「アイディアゾーン」と集中力を養う「コンピーテンスゾーン」「プロジェクトゾーン」の3ゾーンを設けた。本館最上階の12階には、デザイン家具など配置し、インスピレーションと情報交換を促すリラックスしたデザイン空間を用意している。

フォルクマル・デナー取締役会会長は「デジタルコネクティビティの時代に技術的な競争力を優位に保つためには、センサー技術とソフトウェア関連の専門知識の向上が不可欠だ」と持論を述べ、「多少のリスクは恐れずに打って出る必要がある」とまで決意を固めている。この新研究センターで研究開発の主眼に置かれているのは、センサー/バッテリー技術/オートメーション/ドライバー支援システムの4つ。それぞれにシステムエンジニアとソフトウェア開発者が所属し、活動をおこなうという。

またボッシュは「これまでもスタートアップ起業との連携を積極的に進めてきており、実際に数多くの実績を残してきた」(デナー会長)が、スタートアップ企業との更なる連携強化と従業員の起業家精神を喚起することも、この研究センターを拠点として促進する考えを示した。新しいビジネスアイディアを持つ世界中のインキュベーターに対して、中小の企業を支援するインフラをセンター内に構築し、市場にフィットし早期に利潤を上げられるビジネモデルを提供する用意があるという。

自動運転時代に向けたIoTの進展と、ベンチャー企業との連携による新しいビジネスモデルの早期立ち上げという重要な課題を目の前に、サプライヤーや自動車メーカーはここ数年、積極的に研究開発拠点の拡張に努めている。ボッシュの例を待たず、多くのサプライヤーにとって、研究開発機能の早期強化は国際競争力を維持していく意味で避けて通れない道と言える。

「多少のリスクは恐れずに打って出る」(デナー会長)というアグレッシブな姿勢でR&Dを強化するボッシュ。「今後20年にこの研究センターから生まれた技術がモビリティに変革を与えることになるだろう」とデナー会長は自信を示す。

《北島友和》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集