競技用モトクロッサーの450クラスはハンパない。エンジンのピックアップが過激なほど鋭く、サスペンションも一部のトップライダーのためのビッグジャンプに備えていて硬めだから、到底ホビーの範疇でファンライドを楽しむ程度のライダーには乗れない。
…そう思っている人が少なくないだろう。
しかし、2016年型の『RM-Z450』では、それは当てはまらない。たしかにエンジンのスロットルレスポンスは鋭いが、唐突にパワーが盛り上がるのではなく、低回転域から比較的フラットに盛り上がり、ライダーはその潤沢なトルクに助けられる。
たとえば250では踏み倒していけないようなワダチや、ハンドルをとられそうになる泥濘も、アクセルをビシッと開けてやれば、何事もなかったかのように走り抜けられる強靱な突破力がある。
その頼もしい走破性が乗り手をラクにさせ、結果的に疲れず、淡々とコースを周回できてしまうのだ。
もちろん、高回転まで使いきるなんてことはできない。コーナーでスリップしたときや、ギャップでバランスを失ったときに感じる手応えは、450ならではのズッシリとしたものがあり、リカバリーでヒヤッとすることがある。
ただし、お手上げではない。気持ちを少し落ち着かせ丁寧に乗れば、怪物ともいえるパワフルなマシンの旨味が見えてきて、そこを引き出せるようになってくる。
レースユースだけでなく、ファンユースにもアリかも。2016年型RM-Z450は、そう思わせるフレンドリーさが、高い戦闘力の中に共存している。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
デザイン:★★★★
総合戦闘力:★★★★★
オススメ度:★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。