筋肉質だが、ボリューム感はさほどなくスタイリッシュ。誰の目にも新しいデザインだ。
跨ると見た目以上にスリムで、車体とのフィット感が素晴らしく良い。ニーグリップがしっかり決まり、下半身でマシンをホールドしやすい。ステップ位置やその幅も吟味されているのがよくわかる。押し引きしても軽く、取り回しの感覚は400ccクラスなみだ。
ハンドリングも軽快で、このヒラヒラ感は旧いバイクや重量級クルーザーを好む人には安定感がないと感じてしまいそうなほど。旋回性が高く、ワインディングでは水を得た魚のようにキビキビ走る。
689ccの排気量を持つ並列2気筒エンジンは低速から力強く、ツインらしいパルス感だって4000回転以下ならある。スロットルレスポンスも鋭く、それでいてパワーバンドが広く扱いやすいから乗り手を選ばない。
コーナリングマシンであるもののストップ&ゴーを繰り返す街乗りも楽しいし、高速道路でのクルージングも振動が少なく快適。トップギヤ6速での100km/h巡航は4200rpmほどででき、淡々と走るのも苦にしない。
ABS未搭載車なら70万円を切るリーズナブルさだが、フロントからテールエンドまでを独特な造形で繋いだ樹脂パーツをはじめ、複雑で美しい曲げ加工を施したエキゾーストパイプなど手が込んでいて、安っぽさは皆無。
「普段着感覚で楽しめる運転の楽しさ」とヤマハが謳うように、気負うことなく乗れ、オールマイティに使える。優等生ながら味気ないということはなく、いつだってエキサイティングだ。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★★
スタイル:★★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。