19日に決勝レースが開催された「全日本選手権スーパーフォーミュラ」(SF)の今季第3戦。小林可夢偉(#8 KYGNUS SUNOCO Team LeMans)はスタートで順位を3番手まで上げるが、ピット作業を終えた後にペースが上がらず苦戦、最終的には10位だった。
富士スピードウェイといえば、多くの日本人ドライバーにとって走行経験豊富な“ホーム”といえるコースだが、若い頃から欧州を中心に活動してきた可夢偉にとっては“アウェイ”の度が高まるコース。現在のコースレイアウトではフォーミュラのレース経験がなく、2013年のWEC富士戦に参戦した際も悪天候でレースは実質的に戦えていなかった。しかも第1~2戦の舞台だった鈴鹿や岡山と違い、今年は開幕前の公式テストが富士では実施されなかったというのも向かい風要素である。
それでも前日、雨の予選でQ3に進出し、6番グリッドを獲得。ドライの決勝では「ダッシュ自体は良かったと思います」というスタートから1コーナー前後までのポジション争いで3番手にまで上がるなど、ファンを大いに期待させた。
しかし、ピットインして給油&タイヤ交換を済ませて以降、「タイムが上がるはずの2セット目のタイヤでタイムが下がってしまいました。まだ原因が分かっていないんですけど、そこからは(マシンパフォーマンス的に上位で)勝負できないところにいってしまったので」という状況でレース後半は苦戦。
「完全にリズムが崩れましたね。守りのレースになっているうちにタイヤにフラットスポットを作ったりもして、最終的にはタイヤが壊れ(た状態になっ)てしまいました。(20周終了時にピットインするまでは)勝負できる可能性もあると思っていたんですけど」
実質初コースの富士ということを考えれば、レース前半はまずまず以上の感触があったようだが、やはり“アウェイ”な上に予選日が雨でドライでの走行を積めていなかったことも響いてか、最終的にうまくまとめ切れなかった。ただ、迫り来るライバルたちを相手に見せたディフェンススキルは流石。観客や関係者に対しての見せ場であったことは事実で、最終的に10位までポジションを落としてのゴールにも価値は充分にあった。
次戦もてぎ以降も可夢偉の戦いには要注目。そのもてぎも「12年ぶりですかね」ということで、アウェイ度の高いレースが今後も続くことは事実だが、それを週末の短い走行時間のなかでどう可夢偉が克服するか、これが今季SFの見どころのひとつだ。
ちなみに今回、雨の予選でセッティングも決まっているとはいえないなか、Q3進出という一定の成果を出した時点で、「今後に向けて(不慣れなコースが多くでも)そうわるくなってはいかないんじゃないか、と思えるところもありますね」との旨を語っていた可夢偉。ファンは再度の表彰台登壇、そして初優勝を期待している。
なお、この日は決勝の前に、前日に日本でも訃報が伝えられたジュール・ビアンキ選手への黙祷が捧げられるなどした。レース後の可夢偉はチームシャツの袖に黒いリボンを付けてもいたが、昨年のF1ではチーム戦力的な部分で実質的に最大のライバルでもあったビアンキ選手の訃報に際して、可夢偉は以下のようにコメントしている。
「(昨年10月の日本GPでの事故から)ここまで彼はよく頑張ったな、と思います。家族と関係者には辛い期間であったでしょうし、多くのファンも心配していたなかでこういう結果になったことは、すごく残念です。彼のような才能あるドライバーが亡くなるというのは、モータースポーツ界にとっても大きな財産の喪失。これからもっと安全性の向上に(すべてのレース関係者が)努めていかないといけない、そう認識もしています」