【シボレー コルベット Z06 試乗】アクセル“ひと踏み“100km/hオーバー、最強のアメリカンV8…桂伸一

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シボレー コルベット Z06 と桂伸一氏
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  • シボレー コルベット Z06
  • シボレー コルベット Z06 コンバーチブル
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アクセル“ひと踏み” 100km/hオーバー、という驚愕の世界を味わう…。

『コルベット』の最強モデルは、いつの時代も世界のスポーツカーファンに衝撃を与えるが、7代めC7コルベットに誕生した最強の“Z06”はさらに驚くべき存在だった。

日本の法定速度を超えるのは7速MTのローギア、つまり1速だけでアッサリと…。普通のセダンで100km/hを超えるのは2速から3速まで使うが、Z06は1速のみで0から100km/hオーバーに達する。その守備範囲の広いギア比にも驚きだが、停止状態から一気にそこまで車速を伸ばす低速トルク溢れるエンジン特性こそ注目だ。

搭載されるエンジンは、LT4型6.2リットル V8に過給器S/C(スーパーチャージャー)を組み込む。パワーは659ps!! トルクは89.8kgm!! とコルベット史上最強。

これ例えば、乗車定員“80名”の大型路線バスが持つトルク値と変らない力量の持ち主ということだ。

そのエンジンが車重1600kgの“2人乗り”スポーツカーに搭載されてフル加速すると、0-100km/hのタイムはマニュアルの7速MTで3.2秒! 変速が異様に早いオートマチックの8速ATは何と2.9秒!! これはV8エンジン搭載の後輪駆動、量産スポーツカーとしては世界最速に輝く。

最高速度は315km/hと、これも世界のトップスリーに入る。日本でそれを確認するにはサーキット以外はもちろん御法度。

しかし試乗中にどうしても確かめたくなり、直線のみの短かなテスト場で、無理かなと思いつつ、回転リミットの6500rpmまで引っ張り上げると、2速で150km/h、3速200km/hに達した瞬間に直線が終わりフルブレーキング。オプションのカーボンブレーキの威力がクルマ全体を路面に沈み込ませ、後方から引き戻すかのような強烈な力で急減速して難を逃れる。これ以上の加速は富士スピードウェイのように1km以上続く長い直線が必要だ。

Z06の外観は、コルベットが持つ精悍さはそのままに、フロント56mm、リア80mmとコークボトルのように大きくフレアした専用スタイルが魅力。コルベット史上最大のボディサイズの理由は有り余るエンジン出力を確実に伝達するワイドなタイヤとブレーキを収め、肺活量が大きいエンジンのために冷却も含め、空気の流れをスムーズにし、空気力学を有効活用するためのサイズアップでもある。

路面との接地感に勝るタイヤによる操縦性は、ハンドル操作に忠実で曲がりやすいZ06のもうひとつの魅力だ。

コーナーの進入から旋回しやすく、立ち上がり加速では駆動力を無駄なく伝達する新たなeLSDを装備するが、一般公道ではその威力を特に感じられないまま安定走行が続く。

高速から安心、安全確実に停止できる余裕のブレーキ力など、高次元でトータルバランスに優れていることを確認した。

その一方で、エンジンは直噴技術、可変バルブタイミング機構に加えて気筒休止によるV4走行も展開するなど、環境対応も怠りない。走行中にその変化を探ろうとしたが、若干の音の変化は感じるものの、振動等は皆無の洗練された制御にも脱帽。アメリカのハイウェイモードでの計測だが、燃費は12.3km/リットルと優れた値を示す。

完璧なオープンボディのコンバーチブルは走行中に、風速を感じる以外クーペとの違いが掴みにくい。ボディのどこかが軋むとか撓む、捩じれるというオープンにありがちな変化を一切感じさせない強固なシャーシとボディの出来が素晴らしい。50km/hまでは走行中も開閉可能なソフトトップは、まず形状が美しく、閉めた際の遮音性にも優れている。

Z06クーペとコンバーチブル、世界のハイパフォーマンススポーツのライバルに対して、アメリカンV8を轟かせ、コルベットがその存在感を強く示した事は間違いない。

Z06の開発に深く関係するレースカーのC7.Rは、先のル・マン24時間レースにおいてライバルを下し、2011年以来8度目の勝利を飾った事を報告して終わりにする。

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマーティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年の今年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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