【鈴鹿8耐】ケニー・ロバーツ “汗まみれになった1着のツナギ” インタビューその2

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ケニー・ロバーツ氏
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ロバーツは、鈴鹿8耐参戦以前にも、スポーツランドSUGOで開催されるビッグロードレースに参加していた。ただ、当時のビッグロードレースはヤマハのイベントレース的なものであり、日本のファンが、ロバーツが真剣にレースを走る姿を見るのはこの鈴鹿8耐が初めてとなる。しかもパートナーが平となれば、当時のバイクブームも手伝って注目度は急上昇していく。

「日本のファンは本当に熱狂的だった。私が宿泊しているホテルのロビーはもちろん、部屋の前の廊下にもファンが押しかけてきたからね。それと、ピットを出てすぐのアウトラップでは、観客の声も聞こえるし、手を振る姿もよく見えた。ただ、なにを言っているかまではわからず、手を振る姿もどこかバッシングされているようにも見えて、よほど好まれているか、そうでなければ相当に嫌われているなと思っていたんだ(笑)」

ロバーツの豪快であり繊細なライディングは、あっと言う間にファンを魅了していった。しかしロバーツは走行の度に苦悩していた。

「実はGPを戦うときと同じで、ツナギ、グローブ、ブーツを1着しか用意していなかった。耐久レースであることは知っていたけれど、こんなに暑い中でのレースとまでは知らなかったんだ。だから、走行が終わる度にツナギは汗でびしょびしょになって、脱ぐときはいいのだけれど次の走行のときにツナギを着るのが気持ち悪くてね。それと、とにかくエンジンからの熱風がひどくて、走っていて息苦しくなるから要所でカウルから顔を出して呼吸をしていたんだ。スタッフに、ものすごい熱気だと言ったら、そんなものだと言われて驚いたのを覚えているよ」

レース出場はもちろん私生活でも、出かけるときの持ち物は深く考えずに、必要最低限のものを選んで出かけるというのはロバーツのスタイルでもあるようだ。

また、この鈴鹿8耐参戦にあたり、ロバーツはモーターホームを要求していた。日本ではモーターホームを持ち込んでレースウイークを過ごすというヨーロッパスタイルはなく、そもそもモーターホーム自体が少ない日本では手配にとまどったようだが、なんとかヤマハはロバーツの要求に応えるべくモーターホームを用意した。しかしこれは、宿泊用ではなく走行後の休憩用としてのものだった。

「届いたモーターホームは、肝心なエアコンが効かず、どうなっているんだとね。それとレース前日にライダースミーティングがあって、私は普段は行かないのだけれど、レギュレーションで出席が義務化されていたから出たんだ。そこに平がビール片手にやってきた。明日レースなのになんでビールなんて飲んでいるんだって言ったら、問題ないって。私はお酒を飲まないからわからないが、タフなライダーだなと思ったよ」

「それと、こんなこともあった。最初のスティントを終えて、本当に身体はヘトヘトで、何度目かの走行後にトレーナーにもう無理だと言ったんだ。そうしたら、ケニーがダメならこのレースはもう終わりと言われてね。若い平がいるから大丈夫と言ったら、平ももう無理と言っていたって。頭に氷を乗せてもすぐに溶けてしまう暑さだと平は言っていたらしい」

「本当に厳しいレースだった。マシンのセッティングは、すべて平に合わせていた。日本のジャーナリストは“さすがケニー”と言っていたらしいけれど、違うんだ、自分の意見を言ったらテストしなくてはならない。平に合わせればテストしなくてすむからそう言っただけなんだよ(笑)」

《佐久間光政》

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