【メルセデス AMG GT 試乗】このクルマ、恐ろしく乗り易く、恐ろしく速い…中村孝仁

試乗記 輸入車

メルセデス AMG GT
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試乗の説明で、「インストラクターの指示に従わなかった結果、ドライバーのミスでクルマが破損した場合、修理代金を請求します」と、結構な殺し文句でまずは一喝。一方で「皆さんは日本で初めて、AMG GTをドライブする栄誉を与えられました」なんて持ち上げてみたり…。

それにしても価格1840万円(GT S)の高価なモデルを惜しげもなくサーキット全開走行に供与するわけだから、メルセデスも太っ腹である。

で、試乗したモデルは高性能モデルの『メルセデス AMG GT S』である。場所は富士スピードウェイのフルコース。試乗は3つのコースに分かれ、一つは専属ドライバーの横に乗るサーキットタクシー同乗走行。もう一つは隊列走行と言って、専属ドライバーのドライブするクルマの後ろについて、自分で運転してコースを巡るというもの。3つ目はフリー走行。自分でご自由にというやつ。

ただし、このフリーは富士を走るためのライセンスが必要で、それを持たない僕はいわゆる隊列走行で参加した。何しろA級ライセンスなどもう何年も前に更新を止めている。実はフリーの場合 、周回数はアウトラップを含めて2周。一方の隊列はアウトラップを含めて4周で、クルマの味見をするにはこちらの方がお得。しかも前を走るインストラクターさん、えらく飛ばしてくれるので、中にはついていけない人も出るほど。なので、十二分に楽しめたという次第である。


◆NSXが創り上げた新世代スーパーカーの文法

さて、このAMG GT、人はこれをスーパーカーと呼ぶであろうか。かつてホンダ『NSX』がデビューした時、僕らも含めてV6を横置きした当時のモデルを、スーパーカーと認めた人はほとんどいなかった。最大の理由はあまりにも乗り易かったからだ。

当時、スーパーカーといえば、余程の腕っ節のある人でないと乗りこなせない、乗りにくいクルマこそ、スーパーカーとして持て囃された時代だった。つまり、俺にしか乗れない…、そんなクルマこそがスーパーカーで、女・子供にも簡単に乗れるNSXは、スーパーカーではなかったのである。時代が過ぎ、ホンダNSXの功績は、その「乗り易い」をスーパーカーに求められる大きなファクターの一つに浮上させてくれたこと。今ではスーパーカーと呼べる多くのモデルは、誰もが何のためらいもなく普通に乗れ、しかも渋滞したトラフィックでも全く音を上げない快適なクルマとして存在する。

AMG GTもそうした1台に違いない。さすがにサーキットを走ったわけだから、渋滞トラフィックでどうなるかは不明だが、そんなものは現代の技術からすれば何も起きないはずである。そもそもサーキットを全開走行。しかもエアコンを効かせて快適に走っても何ら問題ないのだから、渋滞などものともしないのは当たり前だ。

唯一インストラクターが気にしていたのは、トップスピードからフルブレーキングが必要な1コーナーへの進入。だから、さすがにだいぶ手前からブレーキングを開始してブレーキを労わっていた。恐らくは300m以上残してブレーキングを始めていた。ところが最終コーナーをゆっくり立ち上がってその位置まで、即ち300m手前の減速までの区間、距離にしておよそ1200mほどだろうか。この距離でAMG GTはいとも簡単にメーター読み270km/hに到達してしまうのである。しかも無類の安定性があって、ステアリングを握る手に汗すらかかないほど快適に…である。


◆とにかく、安定して速い

比べてしまうのは無理があるが、去年の夏このコースを某国産スポーツタイプのセダンで走った。その時はもう、汗のかきまくり。とにかくクルマを制御するのにかなりの神経を使ったからだ。勿論AMG GTをポテンシャルのすべてを出して回って来いと言われたら、それは汗もかくだろう。しかし、その某国産スポーツセダンよりもはるかに速いスピードで周ってきても、その安定性の高さは恐れ入るほどで、何の気を使うこともなかった。

さすがに各コーナーの侵入は先導車が意図してスピードを緩めていた。でも、そこまでは全開でついていくほどだし、ダンロップコーナーの名がつくシケイン手前のフルブレーキングでは、いきなりベルトがグイッと体を締め付けられてちょっとビックリしたが、強烈な前方向のGがかかると、体をより強く拘束するようになっているようだ。とまあ、それほどの過激な減速も体験しているのである。

このダンロップコーナーから最終パナソニックコーナーまでは、登りでエイペックスの掴みづらいコーナーが続く。このあたりもインストラクターがゆっくりと流してくれたが、それでもプリウスコーナーの手前ではリアがゆるりと流れ出しそうになる。と言ってもESPがすぐに介入してくれるから何事も起きないが…。

3周目のストレートで意図してブレーキングを遅らせた。と言っても十分な安全マージンを取ったうえでのことだが、車載メーターのスピード表示は280km/hを少し超えていた。最終コーナーの立ち上がりをもっと速く、そしてブレーキングをさらに奥までずらせば、トップスピードは300km/hに達するのではないかと思われた。とにかく速い。それに全く安定感を欠くということがない。それでも安全デバイスを外し、不用意にパワーをかければ、恐らく、何かが起きそうな気配はある。つまりパワーはあるのだ。

ESP支配下におけるコントロール性の高さは文句なし。サスペンションは手元スイッチで3段階に切り替えられるが、それを試す余裕は残念ながらなかった。

唯一の欠点。それはチビのドライバーには不利なドラポジしか取れないということ。身長160cmの僕だと、シートは一番前に出し、さらにハイトを高くしないと理想的なレーシングポジションは取れない。本来だとシートハイトをもっと下げたいところ。そして、その状態だとセンターコンソールに付くシフトレバーは体よりずっと後ろにある。だから、仮にあったとしても(すべてはパドル操作だけだが)、シフトレバーによるギアシフトは不可能な状態だった。というわけで僕より背の低い女性はポジションに苦慮すること間違いなしだ。

とはいえ、そんな問題は小さな欠点。このクルマ、恐ろしく乗り易く、恐ろしく速い。


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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