【マツダ ロードスター 試乗】“原点回帰”が作り上げたひとつの回答…石井昌道

試乗記 国産車
マツダ ロードスター 新型
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原点回帰が焦点の一つとなっていた4代目のND型『ロードスター』。従来のNC型は、初代NA型からみれば大きく重くなり、エンジンも2.0リットルまで排気量アップされていた。

それでもライトウエイトスポーツの範疇(はんちゅう)内であり、正常進化と言えるものではあったが、このまま延長していっていいものか? と悩み、葛藤した開発陣は、今一度ロードスターを見つめ直し、出した回答が原点回帰だったのだ。

歴代モデルやライバル車を比較試乗していくと「やっぱりNAっていいとこあるよね」と、社内で共通認識ができあがったのだという。先達の例でいえば、NC型は『MG-B』だが、NA型はMG『ミジェット』であり、ヒラヒラと舞うようなライトウエイトスポーツらしい感覚が、より強かったのだ。

原点回帰の具体的な目標を数値で表せば、車両重量は1000kg以下。素のモデルである「S」は990kgとこれを達成し、NC型から100kg 軽量化された。NA型の素は940kgだったが、パワーステアリング、パワーウインドウ、エアコン無しだったので、それを考慮すればNA型と同等以上に軽いと言えるだろう。

軽くなったのは素晴らしいが、一つ心配だったのは現代に求められる安全性を持たせつつ、25年分の進化した技術でNA型のようなスペックのクルマを造ったときに、果たしてドライビング・プレジャーが実現できるのだろうか? ということだった。

NA型は今の目から見るとスタビリティが高いとは言えず、そこがヒラヒラ感や楽しさに繋がっていた部分もあったが、それを手法として使うわけにはいかない。ND型はビタッと安定しきったクルマになってしまうんじゃないかと不安だったのだ。

ところが、ND型は想像以上のドライビング・プレジャーを持っていた。サスペンションは、微少入力域からしなやかでスムーズに動き、ストローク感がたっぷりとある。「よく動くアシ」という表現がぴったりで、これが街中など低速域から操っている実感をもたらしてくれる。ハンドルを右に切れば左側に、アクセルを踏めば後方に、荷重がスッと移動していくのがわかりやすいからだ。

前後に動くピッチングのセンター軸を従来より後方、ほぼドライバー付近へ持ってきているのはND型の特徴の一つだが、これによってブレーキング時に前のめりになる動きもわかりやすくなっている。

こういったわかりやすさは、タイヤを滑らせない範囲でもクルマを操っている実感、ヒラヒラと舞う感覚を実現することとなった。現代的なスタビリティとドライビング・プレジャーを両立する賢い手法なのだ。

しなやかにストロークする奥深い味わいを、より強くもっているのは素の「S」。スタビライザー(リア)やLSDに頼ることなく、まずはサスペンション本来の力でハンドリングを煮詰めていく考え方は、ライトウエイトスポーツの雄と言われるロータスに通じるところもある。低い速度域から楽しめるというのは、現代のスポーツカーとしては大きな価値。街中からワインディングまで、常に人馬一体を味わいたい人にオススメだ。

もう少し、ハードな走りを期待するのであればリア・スタビライザーとLSD を装着した「S Special Package」を選択するべきだろう。ボディの補強によってステアリング・レスポンスが鋭くなっており、ヒラヒラというよりもキュンキュンとした小気味いい走りになっている。アクセルワークによって曲がり方をコントロールするFRらしさがあるので、サーキット・レベルでも楽しめるはずだ。

もっとも「S Special Package」でも基本はしなやか系ではある。開発陣は「軽量ボディのモデルを、しなやかなサスペンションで操縦性をまとめあげるのはもっとも大変。逆に硬くする方向は簡単」と意味ありげに言っていた。

しなやかなベースモデルをしっかりと造り込めたという自信を伺わせつつ、今後の展開にも期待して欲しいというメッセージなのだろう。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア/居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
オススメ度 ★★★★

石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

《石井昌道》

石井昌道

石井昌道|モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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