【マツダ ロードスター 試乗】初代を彷彿とさせる原点回帰モデルのS 6MT…青山尚暉

試乗記 国産車
マツダ ロードスター 新型(量産試作車)
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1989年に登場した初代『ロードスター』(ユーノスロードスター)には特別な思い入れがある。

とにかく当時として手頃な価格、これぞライトウェイトオープンスポーツの楽しさ、扱いやすさ、そして毎日の足としても使える実用性、乗り心地の良さなどにぞっこんだった。箱根や伊豆に向かうのも、ドライブに出かけるというより、ロードスターを走らせられるという楽しみが先行し、それが目的だった。

今から26年の前のことだから、ボクも26歳若くイケイケで、青春時代!? の様々な思い出が詰まった1台でもあるのだ。今、40代後半から50代の人で同じ思い、経験をした人も少なくないと思う。

以来、ロードスターは世界中のファンに愛され、スポーツカーとして進化してきた。そしてこのメイドインジャパン、メイドイン広島の4代目である。

それにしてもSKYシリーズ、魂動デザインの新型ロードスターは若者が見ても、50代のボクが見てもカッコ良すぎるじゃないか。

フロントミッドシップ、先代比約100kgの軽量化を果たしたライトウェイトオープンボディ、50:50前後重量配分、ヨー慣性モーメントの低減、買いやすい価格といった原則を貫きつつ、しかし現代のロードスターとして蘇ったこだわりの革新に、乗る前から拍手である。

そんな新型は「初代回帰」と言える6MTのみのSグレード(249万4800円)、ダイナミック性能を追求した6MTと6ATが選べるSスペシャルパッケージ(270万~280万8000円)、そのレザーパッケージ(303万4800~314万2800円)が揃っている。初代より高く感じるかもしれないが、今ではエアコンが標準で、先進安全機能も満載なのだから、こんなもんである。

『アクセラ』用1.5リットルユニットをFR化しほぼ専用設計したエンジン、195/60R16サイズのタイヤは全グレードで共通だが、Sスペシャルパッケージの6MTのみトルクセンシング式LSD、リヤスタビライザー、トンネルブレースバーが加わるのが、グレードによるシャシー系メカニズムの差異である。

まぁ、そんな話はどうでもいい。最初に試乗したのはSグレードだが、乗り込めばスポーツカーを強く実感させる低くセットされたシートはタイトに背中を包み込み、ホールド性抜群だ。内装はシンプルだが、ドア内張りアッパー~Aピラー下まで連続するボディ同色の樹脂パネル、インパネの上にそそり立つモニターがオシャレであり現代のロードスターらしさである。

クラッチは軽くミートポイントが絶妙で実に扱いやすい。1.5リットル、131ps、15.3kgmの控えめなスペックとなる、7500回転がリミットのハイオクを要求するエンジンは極めてトルキーで、3速1000回転台さえ受け付けるフレキシビリティを持つので、街中でも実に走りやすかった。

クロスレシオの6MTのシフトフィールはもうゴキゲンだ。カチッとしていて金属感あるコクコクっとしたタッチでシフトできる。球形シフターのグリップ感、シフトフィールは日本車MT最上級だと断言したい。

動力性能的には輸出仕様に2リットルエンジンが用意されていると聞いたあとでも、これで十二分と思えた。いや、日本の道でエンジンを全開しやすく、ライトウェイトスポーツカーを楽しみ尽くせるのは間違いなくこちらのダウンサイジングエンジンのほうだろう。

乗り心地も素晴らしい。サスペンションは比較的ソフトな設定で、日常的な使い方でいかにもスポーツカー的な固さを感じさせないのが嬉しい。これなら初代同様、”みんなの”スポーツカーになりうる。

最新のオープンボディだけあって、ボディ剛性は極めて強固。その証拠のひとつとして挙げられるのが、オープン状態で段差などを走破したときでも、立ち気味のフロントウインドスクリーンがブルリともしないこと。ルームミラーがブルブル震えるかどうか見ていればそれがよく分かる。

今回は先行量産車を短時間、横浜周辺でドライブしただけだが、フットワークは初代を思わせるひらりひらりと操れる軽快感、現代的と言える圧倒的なスタビリティの高さの両立が見事。4輪のタイヤの状態が手にとるように分かるコントローラブルな操縦性はもはや感動の領域だ。

ちなみに走りの軽快感を演出する小さなポイントが、ステアリング断面形状。3時、9時部分を細めてあり、縦方向を先代比で2mm細くすることで操作時の軽快感を高めているのだという。

ボンネット左右の盛り上がった稜線(山)が視界に入り、カーブや山道などで挙動が分かりやすいのも特筆すべき点だ。また、ボディ四隅がスパッと削られているため、小回り性がいいのも扱いやすさに直結している(ボディーを真上から見ると見事に八角形だ)。

ただし、注文がないわけではない。身長172cmのボクがクラッチをしっかり踏めて、フットレストを有効に使えるドライビングポジションを取ると、シートスライド位置が思いのほか前になってしまうのだ(クラッチを踏む必要のないATモデルだとそうはならない)。

ステアリングを前後方向に調節できるテレスコピック機能があれば…と思うのだが、開発陣に聞けば、コストと重量増、テレスコピック機能を付加するとインパネ高が3cm高まってしまうのが、不採用の理由らしい。もちろん、山道でソノ気になって走るシーンならレーシングポジション的で問題ないものの、日常使い、高速走行など、ゆったりしたドライビングポジションを取りたいシーンもあるわけです(あくまでボクの体型での話)。

とはいえ、後に乗った開発陣お薦めメイングレードである、もっとガチッと重厚な乗り味となるSスペシャルパッケージにくらべ、ライトウェイト感がより強く、初代っぽさが色濃いのはこちらである。MTの楽しさを知っていて、しかし今ではATに乗っている人にとって、新型ロードスターの6MTモデルは、ふたたびMTに乗るきっかけを与えてくれる絶好の存在である! と言ってしまいたい。

そして、ぜひ、今どきの若い人にも乗ってもらいたいものだ。初代当時もそうだったけれど、MTをスマートに操れる男は、同性にはもちろん、助手席の女子からも尊敬されること請け合いだ(多分)。信号待ちで、片手でサッと幌を開けるしぐさなんか、壁ドン以上に胸キュンさせられるかもしれない(と、MT車所有経験豊富なオジサンは勝手につぶやく)。もっと言えば、新型ロードスターを教習所のMT教習車に採用して目玉にすれば、若者のMTファン、オープンスポーツカーファンが増えると思うんですけどね…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行なっている。

《青山尚暉》

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