しかし今季は、Racing Tech陣営が「Audi Team Racing Tech」としてR8での参戦にシフト。GT300でR8が新型に切り替わるのは来季の予定なので、このタイミングでの台数増は意外と思える部分でもあるが、そこには陣営(チーム)の意欲や選択、戦略といった要素が当然ながら介在している。そしてそれには、アウディの日本法人アウディジャパンのモータースポーツ活動、特にGT300クラス参戦チームへのさらなる支援体制強化の方針が影響しているようだ。
#21のAudi Team Hitotsuyamaが欧州の強豪WRTとのコラボレーションを今季から発足させたり、#86 Racing Tech Audi R8のドライバーにR8で昨年のニュル24時間レース総合優勝を達成しているクリスチャン・マメロウが起用されたことなどの戦力増強策に、(直接的ではない部分も含め)アウディジャパンのサポートが好影響をもたらしていることは確か。大喜多社長の言う、プライベートチームへのサポートの仕方が「分かってきた」ところの効果だと思うが、実際に開幕戦で結果が出た。雨絡みのレースでの3-4フィニッシュは、決して展開に恵まれただけの好結果ではなく、R8がGT300でのタイトル戦線参入を果たす予兆ともいえる内容が伴っていたと見る。
16年の新型R8導入を控えた今季ではあるが、GT300戦線の台風の目となりそうなアウディ勢。開幕戦4位の#86 Racing Tech Audi R8をマメロウとともに駆る細川慎弥は、レース前日に「R8は剛性が高いと感じるマシンです」との旨を語っていた。いきなりの好結果で手応えはさらに増し、弾みもついたことだろう。#21ともども今季一層の躍進が期待される。
《遠藤俊幸》