【JALと働くクルマ】意外と知らない? 空港で働くクルマたち

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東京・羽田空港。滑走路には数分おきにひっきりなしに旅客機が飛び立ち、降りてくる。まさに朝の通勤列車のよう。その緻密な運行は、さまざまな人やシステム、機器が支えているから実現できるものだ。その支えのひとつに車両がある。

いわゆる働くクルマだが、空港には、街で普段見るクルマとは、まったく異なった姿をしたものが多い。今回、そうした車両をJALの協力のもとで取材する機会を得たので、ここに紹介しよう。

空港で働くクルマとして、もっとも数多く見ることができるのが「トーイングトラクター」だ。その仕事は、貨物コンテナなどを積んだパレットを文字通り、トーイング(引っ張る)して運ぶこと。構内で見ることができた車両は、フォークリフトなどもリリースする豊田自動織機製であった。全長約3.6m×全幅1.4mほどの2座のオープンカー。ルーフがないのは、作業しやすいような広い視野を確保するため。逆に雪の多い空港ではルーフ付きが運用される。また、運用会社によって雨を避けるためにルーフを備える場合もあるという。

この「トーイングトラクター」は、街中で見るコンパクトカーほどの大きさだが、車重はなんと3.6tもある。見れば、バンパーも車体のパネルもすべて、分厚い鉄製だ。しかし、重い荷物をひっぱるには、タイヤに強い荷重をかける必要がある。そのためにあえて重く作ってあるのだ。エンジンは55馬力の2486ccディーゼル。その車重とディーゼルの大トルクを使って、荷物と自重でひとつ約2tにも達するであろうパレットを、最大6個も引いているのだ。

続いては「トーイングカー」。旅客機は、強力なジェットエンジンを搭載しているが、地上では前進しかできない。そのため、出発時に旅客機を移動させるための車両である。巨大な旅客機を案内する「トーイングカー」は、空港で働くクルマの花形的存在と言っていいだろう。

ちなみに、「トーイングカー」には、「トーバー」という棒状の金属バーを使って旅客機を移動させる方式と、「トーバー」を使わずに旅客機の前輪を持ち上げる「トーバーレス」式がある。また、車両の大きさには、いくつかのサイズがある。もちろん、旅客機が大きくなるほど、大きな「トーイングカー」が必要になる。

そこで見学できたのが、羽田空港では最大規模となる車両重量50tクラスの小松製作所製の「トーイングカー」だ。こちらは、「トーバー」を使うタイプ。荷物を運ぶ「トーイングトラクター」同様に、こちらも車両の外板は分厚い鉄板。しかも、内側に重りとして、さらに分厚い鉄板が張ってある。エンジンは、最高出力295ps/最大トルク123.2kg-mを発揮する1万1040ccの6気筒ディーゼル・ターボ。駆動はフルタイム4WD。強烈なパワーを4輪にかけて、ボーイング777であれば総重量133.1tに乗員と荷物などを満載した旅客機を移動させるのだ。

前進4速・後退2速のトランスミッションは、トルクコンバータを備えたセミオートマ。変速は任意で行えるため、旅客機を移動させるときは2速固定で行うという。また、前進/後退を行いやすくするため、運転席には前向きと後ろ向きの2座が用意されている。また、4輪操舵も可能なため、意外とこまわりも効くようになっている。

続いては、「トーバーレストーイングカー」。こちらはドイツのゴールドホッファー(Golf Hofer)製だ。全量9.6m×全幅4.2m×全高2.4m。車両重量24.9t。400馬力の1万2000ccのディーゼル・ターボ。車体後部で、飛行機の前輪を抱き上げる。トーバー式よりも、移動中の速度が高い(最大30km/hほど)のが、トーバーレス式のメリットとなる。

到着した旅客機を送り出すために働くクルマたち

遠い街から飛んできた旅客機が乗客を降ろすためのゲートに着くと、待ってましたとばかりに数多くの車両が集まってくる。旅客機の下腹部にある貨物室から、荷物や貨物パレットを下ろすための「ハイリフトローダー」。車体後部のバラ積み貨物室から、個々のトランクなどを下ろす「ベルトローダー」。また、給油を行うための「給油車」や、飲料水を補充する「ウォーターカー」。汚水を回収する「ラバトリーカー」。ゴミを運び出す「トラッシュカー」。そして、ターミナルから離れた場所に旅客機が駐められたときに使う、いわば移動式の階段である「パッセンジャーステップ」などが存在する。

面白いのは、旅客機の胴体に届くように作業する車両は、高所作業しやすいようになっているし、翼の下や機体の真下で働くクルマは、みな全高が下げられていることだ。荷物を運んだり、給油や給水といった業務は、街中でも同様に行われることがあるが、旅客機を相手にするということで、どの作業車も街中とは異なった姿をしている。こうした特殊性があることが空港で働くクルマならではなのだろう。

もしも空港で時間の余裕があれば、窓から地上の様子を眺めてみよう。そうした働くクルマたちが走り回る姿を見ることができるはず。彼らが旅客機の運航を支えているのだ。

《鈴木ケンイチ》

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