全体評価のオススメ度に★ふたつ、厳しくてすみません。いまからその理由を書きます。
新型『アルト』の「F」グレードに搭載されたAGS。基本構造はクラッチ操作を自動でやってくれるMTであり、AT限定免許で乗れる。以前、ATのMTシフトを見た女性誌編集さんに「私、免許がないので乗れません!」と叫ばれちゃったので念のため。
同じタイプはプジョーやフィアットなどでも採用されて、MT率の高い欧州では「クラッチなしで便利!」と人気だけれど、AT率の高い日本のユーザーにしてみれば「シフトアップするときに、息継ぎしたみたいに加速がにぶるのがいや」と嫌われる危険性の高いシステムでもある。
さて、アルトFに採用されたAGSは、その息継ぎが少ない! でも、ある。少ないけれどあるにはあるのだ。ただ、うまくアクセル操作をしていけば、かなり軽減できる! でも、ある。軽減できるけどあるにはあるのだ。どっちなんだよと怒られそうだが、確かに息継ぎはあるけど、すごいがんばったじゃん! と、褒めたいのが私の気持ちなのだ。
いままで乗ってきたほかのメーカーのものより、すごく乗りやすいのだから。さらに、走行中にブレーキを踏んで減速すると、AGSがガゴガゴッと音をさせて自分で勝手にギアダウンしており、ああ、がんばってんなーと涙ぐみたくなるくらいだ。このガゴガゴ音がね、愛おしいのである。
もちろんMT操作もでき、自分でギアを選ぶこともできる。3速から2速へと落としたときにばちっと決まる早さと快感はほかでは味わえない気持ちよさ。でも、シフトレバーの位置、もう少し考えてもらいたいけれど。この位置だと使いにくくて操作意欲が落ちるのだ。
そこそこ評価しているのに、なぜ★がふたつかというと、理由は燃費の悪さである。アルトのCVTが37km/リットルだというのに、AGSは29.6km/リットル。この差は痛い。ちなみに同じグレードFの普通のMTは27.2km/リットルだというから、CVTどんだけいいのよ? って話なのだが。
ただ、CVTの37km/リットルという数字を突きつけられると、AGSの価値がぐっと下がる。もちろん車両本体価格が低く抑えられ、初期費用が少なく営業用にどうぞという戦略もわかる。でも、営業で走り回るならガソリン代の差は注意すべき点だろう。AGSの取り組みは評価したい。でも商品力としてはそれぞれのユーザーに慎重に判断してもらいところである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。