電気自動車の加速のよさは、十分に体験済みのはずだった。車速ゼロからのスタートは、エンジンよりもモーターのほうがだんぜんいい。ハイブリッドカーだってその速度域は、すっかりモーターに任せて頼り切っているんだし。
しかしテスラ『モデルS』。車格といい大きさといい、デザインのなめらかな流線型具合といい、単なるEVではないことは承知していたというのに、高速道路の合流部分でアクセルを踏んだとき、私は自分が分身の術を使えるようになったのかと思った。ものすごい瞬間移動なのである。
なにせ、加速するときの前置きがない。ガソリンエンジンなどの場合、トルクでがっつり前に押し出されるとしても、アクセルを踏んでから「くるぞくるぞ」という脳内準備時間がそれなりにあるものだ。おそらくそれはコンマ数秒より短い時間なのだろうが、それでも期待し身構える時間が残されている。
ところがモデルSときたらどうだ。アクセルを踏んだときにはすでに、移動が終わっているのである。「ぐえ」とか「ひえ~」とかうなっている暇すらない。これはもうクルマではなく、テスラ モデルSという名前の乗り物だろう。
そもそも、乗る前にボンネットを開ければ、荷物スペースになっているし、後ろのトランク部分は大きいし、後部座席に座れば足元はフラットで広いし、運転席に乗り込んだら、デスクトップの液晶画面がタテに張り付いてるんじゃないかと錯覚するようなパネルがあるし。なにもかもいちいちのけぞる状況なのである。
タッチパネルは地図やエネルギー省比率を表示する以外にも、回生ブレーキの強さや乗り心地なども簡単に変えられる。もちろん、インターネットにもつながっているからウェブサイトも見られる。このレスポンスの記事もね。
さらに先日、オーナーの方と雑談をしていたら、「アップデートのサインが出た」というので詳しく聞いたら、レーンキープアシスト機能が追加されるのでダウンロードせよということなんだとか。げげげ、クルマの機能を通信でアップデートってなんなんでしょう?
これまでクルマを購入するときに、「次のモデルチェンジまで待てば、この機能がつくんだよね」と装備について悩むことが多かったけれど、テスラはそういう買い方すらも“関係ないね”な世界。まさに次世代。しかし、日本在住の身とすれば、これでもう少しボディサイズが小さかったら、ものすごくありがたいんだけどな。
■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。