ドコモの通信高速化…「キャリアアグリゲーション」と、もうひとつの新技術

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「高度化C-RAN」アーキテクチャを構成する基地局装置
  • 「高度化C-RAN」アーキテクチャを構成する基地局装置
  • ドコモ R&Dイノベーション本部長の尾上誠蔵氏
  • ドコモ 無線アクセス開発部長の前原昭宏氏
  • LTE-Advancedを構成する主要技術
  • ドコモのLTE-A導入シナリオ 高トラフィックエリアから進めていく
  • 「高度化C-RAN」アーキテクチャの概要
  • 「高度化C-RAN」アーキテクチャによるメリット
  • 「C-RAN」アーキテクチャとは

 NTTドコモは、2015年3月に「LTE-Advanced(LTE-A)」ネットワークの提供開始を予定している。モバイルネットワークをこれまで以上に高速化、大容量化し、ユーザーの快適性を向上させることが狙いだが、これらを実現するためにドコモが提唱し、導入に向けて検証を進めてきたのが「高度化C-RAN」と呼ばれる次世代のネットワークアーキテクチャだ。

 今回、ドコモは同アーキテクチャの屋外商用環境での実証実験が成功したことを発表。それにともなって、5日、YRP(横須賀リサーチパーク)内にある同社のR&Dセンターにてプレス説明会を実施。ドコモ取締役常務執行役員 R&Dイノベーション本部長の尾上誠蔵氏と、無線アクセス開発部長の前原昭宏氏が登壇し、プレゼンテーションをおこなった。

■CAとHetNetを組合わせた「高度化C-RAN」アーキテクチャ

 LTE-Aは、一般には移動体通信の標準化プロジェクトである3GPPがRelease 10以降で仕様を策定した無線技術を指す。単一の技術というわけではなく、複数の周波数帯を同時に利用して通信するキャリアアグリゲーション(CA)や、マクロセルのエリア内にスモールセルを配置して容量拡大を実現するヘテロジーニアスネットワーク(HetNet)など、いくつかの主要技術で構成されている。これら個々の技術について尾上氏は、「CAもHetNetもそれぞれは決して新しい技術ではなく、単なる力技とも言える」と厳しいコメントをしながらも、「新しい技術ではないが、これらを組み合わせることで、素晴らしい、新たなフィーチャーを生み出すことができる」と説明。そうして生まれたのが「高度化C-RAN」だという。

 「高度化C-RAN」は、2013年2月にドコモが提唱。LTE-Aの主要技術であるCAとHetNetの組み合わせで高速・大容量化を実現するもので、今年度末の実用化に向けて商用環境での屋外検証が実施されてきた。そもそも「C-RAN」とは、従来同じ場所に設置されていた基地局装置の制御部と無線部を分離し、制御部を一箇所に集中設置して個々の基地局には無線部のみを設置するアーキテクチャ。「サイズの小さい無線部だけを各サイトに設置する、一方で制御部は集中的に置く。それによって設置も制御も容易になる」(前原氏)というメリットがあり、ドコモは2003年から運用を開始している。この「C-RAN」を文字通り高度化した「高度化C-RAN」は、マクロセルとスモールセルの無線部を同一の制御部に収容する。この構成によって、マクロセルとスモールセル間でのCAが可能となり高速通信を実現、さらに常時マクロセルが通信できることでスモールセル間のハンドオーバーが発生せず、通信品質も向上するという。こうしたマクロセルとスモールセルの制御は「『C-RAN』アーキテクチャでなければ難しい」(前原氏)とのこと。

■カテゴリ6対応のCAで下り240Mbps超を記録!

 今回発表した実証実験では、「高度化C-RAN」の屋外商用環境下において、マクロセルとスモールセルのCAで合計35MHz幅を用いて下り240Mbps超のデータ通信に成功。CAは、利用する帯域幅と、端末側のカテゴリーによって最大受信速度が変動するが、同実験にはカテゴリー6の端末が使用された。カテゴリー6の端末の場合、周波数帯域40MHz幅を使えば最大で下り300Mbpsという通信速度を実現できる。ただし、現状でドコモが商用環境で運用できる周波数の組み合わせは最大で35MHz幅。まだまだFOMAユーザーも多い中でそのすべてをLTEに使える地域は多くなく、「標準的には20MHz+10MHzや15MHz+15MHzといったかたちで合計30MHz幅(下り最大225Mbps)の運用になってくる」(前原氏)という。

 報道陣にも同一条件化での実験が公開されたが、その際はあいにくの雨天で試験端末を少し基地局から離れた場所に置いたため、下り最大235Mbps前後がピークの数字であった。それでもアベレージで230Mbps近い数字を出しており、速度と安定性において十分なポテンシャルが感じられた。その他、「高度化C-RAN」環境下でCA対応端末と非対応端末を移動させ、いかにハンドオーバーによる影響が少なくなるかをみせるデモや、同時に大容量の動画をダウンロードし、CA対応端末がどの程度素早くダウンロードを完了させるかといったデモが実演された。

■今後もカテゴリーアップして、高速・大容量を目指す

 「高度化C-RAN」を適用したドコモの「LTE-A」ネットワークは、いよいよこの3月から提供が開始される。まだ具体的な提供エリアは明らかにされていないが、まずはやはり人が多く、高トラフィックの場所から順次提供される見込み。今後は、「ピーク速度の競争について様々な議論はあるが、この数値が上がることで、確実にユーザー体験は上がっていく。今後もさらにカテゴリーアップしていく」(尾上氏)と、さらなる高速化を目指していく方針を示した。直近では、昨年末に割当てられた3.5GHz帯(40MHz幅)も運用を開始する。さらに、尾上氏は、「複数の技術を組み合わせることで良いシステムになるという高度化C-RANのコンセプトは5Gにもつながっていく。現状、カバレッジが低くなるためホットスポット的な用途が想定されている部分を覆したい。たとえば高度化C-RANとマッシブMIMOの組み合わせで、高い周波数帯でも遠くに届く安定したシステムが作れるのではないか」と、5Gネットワークも見据えた展望を語った。モバイルネットワークは今後どういった進化をみせるのか、まずは3月に始まるドコモのLTE-Aに期待したい。

屋外商用環境で240Mbps超!ドコモ、LTE-Advancedの技術説明会を実施

《白石 雄太@RBB TODAY》

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