【BMW M5 試乗】噂には聞いていたが、この過激さは「化け物」…中村孝仁

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BMW 『M5』に初めて試乗した。先代はF1にも似た官能的サウンドをまき散らすV10エンジン搭載モデル。しかし、新しいM5はパワー、トルクともに上回るV8ツインスクロールターボ搭載だ。以前からその過激な走りの話は聞いていたが、まさかここまでとは…。

改めて説明すると、パワーとトルクは560ps、680Nm。そのトルクは実に1500~5750rpmとほぼ全域といっても過言ではない領域で発揮される。エンジンの排気量は4.4リットルで、これにお得意のツインスクロールターボを装着したものだ。『X6』などにもこのエンジンが搭載されているのだが、大きな特徴はVバンクの内側にツインターボを装備していることだ。

つまり通常はバンクの外側に付く排気マニフォールドが内側にあり、それがヘッドの上でクロスし、最短距離でターボチャージャーに導かれている。このためにより高い効率が得られる。エンジン単体の写真を見ると何やら臓物が上の方にあって、重心が高くなっている印象を持つが、そんなことは関係ないと言わんばかりのパフォーマンスを示すのである。

真っ白いボディに真っ赤な本革の内装を持った試乗車。エンジンをかけてもそれがとてつもないパフォーマンスを示すモデルとは予想もつかないほど、平和なサウンドを奏でるし、神経質なところがない。トランスミッションは新たに7速DCTとされて、平和なオートマドライブも可能なのだが、そのあたりがちょっと違う。

まずは普通にATモードで乗り出してみたのだが、変速の度にグッと背中を押される感じ。決して躾の良くないDCTという印象がぬぐえないのだが、それもそのはずで、最大限変速スピードを短縮することに命を燃やして作られたものだから、俗にいうところのシフトショックなんて、こちらもそんなの関係ない!というところなのだろう。

ならばということで、マニュアルモードの入れてドライバーも気合を入れ直し、一気に加速してみた。フルスロットルをくれた段階ですでにギアは2速に入っていたのだが、驚いたことにストレートだというのにテールが見事に流れ出した。

恐らく多少路面のアンジュレーションがあったのか、あるいはクルマに少しだけヨーモーメントが出ていたのか、とにかくあっという間の出来事で、すぐに軽いカウンターを当ててスロットルもいきなり戻すことをしなかったので事無きを得たが、正直、ビビった。予想だにしなかった動きだし、第一ESCやトラクションコントロールをカットしたわけでもないから、必ず危なくなったら介入があるものと思っていた。だから、あれっ?となったわけである。

あとから聞いてみると、トラクションコントロールなどのデバイス介入はギリギリのところまでしないように設定されているとかで、スロットルワークはやはり気を付けた方が良い。特に低いギアの場合はいきなりトルクも立ち上がっているし、駆動力が高いから車両を滑らせることなどはいとも簡単なのである。

ならばと気を取り直して、スムーズな加速を試みると、まあ~出るわ出るわ。踏めば命の泉湧くではないが(そんな言葉は死語か)、とめどないパワーが出る。およそ、一般道なら、精々2~3速がいいところ。静かに走るならばこの限りではないが、少しスポーツドライビングを楽しみたくなると、この程度までしかギアが上げられない。おまけにATモードで乗り出した時に感じた背中を押される感は、MTモードでも当然消えるはずもなく、プシュッという音と共に瞬速で変速を終了する。その気持ちの良さはまさに旧型ローバー・ミニのストレートカット・クロスミッションのごとし。シフトが極めて直観的で実に小気味よい。

というわけで、とてつもないモンスターぶりを発揮したM5であったが、出会った最初に、ずいぶん平和なクルマだなぁという印象は完全に訂正させてもらい、「とんでもない化け物だ」に変えることにする。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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