【ヤングクラシック・メルセデス 試乗】20年前の 190E が今、語りかけるもの…中村孝仁

試乗記 輸入車
リマン部品によってレストアされたメルセデスベンツ 190E
  • リマン部品によってレストアされたメルセデスベンツ 190E
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クラシックカーに趣味がある。クラシックカーに乗ってみたい。クラシックカーが欲しい。いずれの場合も、これまでだったらお金と忍耐力と情熱を必要とした。そんなクラシックカーエンスージァストに朗報である。

メルセデスベンツはヤング・クラシックスというディビジョンを2009年に立ち上げ、同年9月から、メルセデスベンツ博物館内にヤングクラシック・ストアをオープンした。ヤングクラシックスとは、おおよそ1970年から1990年頃のクルマを指し、その年代のクルマを現代の路上でしっかりと乗れるようにレストアして販売しようというのが、ヤングクラシック・ディビジョンとヤングクラシック・ストアの使命と活動だ。

実は、メルセデスは以前からクラシックカーセンターという部署を持っており、ここでも古いクルマのレストア並びに販売を行ってきた。しかし、クラシックカーセンターのクルマといえば、大方は1960年代以前のモデル。つまり、最新車と60年代以後、即ち70年代から90年代の世代がぽっかりと空いていたというわけ。そこで、これらの時代のクルマを販売しようというのが、今回の動きのようである。

そんな動きは実は日本でもある。以前からメルセデスベンツ・ジャパンは、このヤングクラシックの世代に乗っているユーザーにはきちんと対応し、パーツも取り揃えて常に入庫しても大丈夫な状況は整えてきたのだという。ただし、大っぴらな宣伝はしていない。しかし、メルセデスというブランドをより広範に受け入れてもらう施策の一つとして、今回ヤングクラシックのモデルを作り上げてみた。それが今回試乗した190Eである。

ではこの190Eは一体どんなクルマか。それはおよそ300点のパーツを交換し、手直しを受けたモデル。メルセデスは自らが作り出したモデルのほぼすべてを、今でも復刻可能なように設計図を残している。だから、たとえどんなメルセデスでも基本的には復刻モデルを作り出すことが出来る。

ということは当然ながらパーツを作り出すことも可能で、実際に稼働している可能性が非常に高いヤングクラシックに関しては、当時のパーツのみならず、それを復刻させたリマニファクチャラー・パーツ(略してリマン部品と呼ぶそうだ)を今も生産している。だから、何かが壊れてもすぐに対応でき、それは日本市場でも同様なのだそうである。というわけで今回の190Eはこのリマン部品とオリジナルパーツを組み合わせてレストアしたものだ。部品交換はそのほとんどが足回りに集中し、エンジンや内装にはほとんど手を付けていないという。

というわけで早速試乗。実はかつて僕も190Eのオーナーだった。と言ってもこのガソリンエンジンのモデルではなく2.5Dターボという、ターボディーゼル車。しかし、内外装に関してはほぼこのクルマと同じである。エンジンをかけるとブルンと揺れてファーストアイドルに入るあたりは時代を感じさせる。スタッガートゲートをジグザグと動かしてDレンジに入れると、ゴツンとショックを伴う。今だったら文句を言うレベルであるが、当時電子制御などという洒落たものはほとんどなく、メルセデスはバキューム制御で、トランスミッションを作動させていた。だから今もリビルトできるしレストアも可能。電子制御はなかなかこのあたりが難しい。

ステアリングは現代のモデルから比べると実にデカい。それにグルグル回る。だから最初の角をまがった時に感じたことは「曲がらない!」であった。もっとも、それが20年前のクルマの良さといえば良さ。どっぷりクラシックに浸りたい人には物足りないかもしれないが、まずは日常で使えるクラシックをという人にはうってつけである。さすがに、メルセデスが手を入れているだけあって、クルマは快調そのもの。雨だったので、例の独特な動きをする一本ワイパーも堪能できた。

動力性能だのハンドリングだのをとやかく言うのは野暮というもの。190Eはデビュー当初からオーバークォリティーを指摘されたクルマだが、要は『Sクラス』の技術や生産クォリティーをそのままコンパクトなモデルに注ぎ込んだから、値段も高くて当たり前。そして今もって実直かつスムーズに動いてくれるのも、このオーバークォリティーのなせる業である。とにかく驚かされるのは、今もってボディの軋みなどこれっぽっちも出ないこと。まあ、良質な個体を選んでレストアしたからかもしれないが、それにしても20年たってこれかよ!? というのが偽らざる印象だった。

ところで、今190Eに乗っているユーザーなら、早速…と思うかもしれない。しかもメルセデスベンツ・ジャパンすべてのディーラーに、最低1名以上のヤングクラシック担当サービスが常駐しているというから、お近くのディーラーに相談すればよい。では、これから190Eを買って、クラシックカーライフを楽しみたい人はどうすればよいか。まずは190Eを探すことだ。しかもそれは正規輸入だろうが、並行輸入だろうが、違法改造されていなければ問わないという。また、ヤングクラシックは何も190Eに限った事ではなく、今のところ日本市場で対応してもらえそうなモデルはW124Eクラス、W126Sクラス、それにW460系のGクラスなどが含まれる。その他のモデルに関しても、ディーラーで一度相談してみるとよい。

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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