トヨタ『プリウス』など、街を走るハイブリッド車は日に日に増える一方である。そうした状況の中で、「バッテリー(補機用の鉛バッテリー)に社外品は使えないのか?」という言葉をよく耳にする。それは「ハイブリッド車の交換は純正品を」とディーラーでは言われるためだ。
「確かに、ハイブリッド車に使われる鉛バッテリーは、従来のガソリン・エンジンのクルマとは異なります」と話すのは、パナソニックストレージバッテリー市販マーケティング本部第一市販マーケティング部の秋岡真弥氏だ。ガソリン・エンジン搭載車におけるバッテリーの主たる役割にエンジン始動がある。一方、ハイブリッド車の補機バッテリーにエンジン始動の役割はないが、システム稼働のための重要な役割を担う。また、アイドリングストップ機能付きの車両は、逆にエンジン始動を何十倍も多く行う。そうした求められる性能の違いがあることで、「バッテリーは純正品を」という風潮ができあがっているのだ。
そこでパナソニックでは、いち早くハイブリッド車やアイドリングストップ車向けの製品開発をスタート。2012年に次世代エコカー用バッテリー「Caos(カオス)シリーズ」として、大容量化を実現したハイブリッド車用バッテリーや、優れた高速充電性能と耐久性を備えたアイドリングストップ車向け製品をリリースしている。
実際にハイブリッド車で社外のバッテリーを使用するときのもうひとつのハードルが交換作業だ。
「ハイブリッド車は車種によって、バッテリーのが搭載場所が異なるため、通常の交換手順と同様にというわけにはいきません。また、バッテリーにアクセスするのに、何か部品を外さなくてはいけなかったりと複雑な構造を持つ車種もあります。そのため、弊社では作業マニュアルをお配りしています。また、交換時にカーナビゲーションなどの設定がリセットされないような、バックアップ機器やバッテリーの劣化具合を見るツールも用意しています」とパナソニックカーエレクトロニクス市販営業1部営業2課の新井由秀氏。
ハイブリッド車の場合、補機用のバッテリーはエンジンルーム内ではなく、トランクルーム下や座席の下などに納められるケースがほとんどだ。そうした車種ごとに異なる、バッテリーの搭載位置や取り外し方をすべて把握するのは困難である。
そこで、ハイブリッド車用のバッテリーを販売するパナソニックでは、一車種ごとの詳しいバッテリー交換方法を記した専用マニュアルを製作。販売会社に向けて配布しているという。実際のマニュアルを見てみると、プリウスであれば現行型から先代モデルなどというように、詳細な手順が多数の写真と共に記載されていたのだ。また、配布するだけでなく、販売店に向けて交換の実技研修も実施する。ディーラーではない店舗でも、安心・安全・確実なバッテリー交換が実現できるように努めているという。
その実際の交換の様子をロータスクラブに加盟する埼玉県の中古車販売店、「u-neoジャンボ草加インター店」において取材することができた。作業を担当したのは、工場長の御子柴佳隆氏である。
まず始めに行ったのは、交換のための下準備。内装類を撤去して、車内にあるバッテリーにアクセスする。マニュアルがあるため、滞りなく作業が進む。また、内装取り外しの方法がわかれば、破損の可能性も大きく低減する。そして、パナソニックの用意したテスターである「ブルーアナライザー2」を使って、バッテリーの状態をチェック。本当に交換が必要なのかを確認する。こうした詳しい検査を行うことで、ユーザーはバッテリー交換の必要性に納得できるというわけだ。そして、カーナビなどのオーディオ類へ電力を供給するバックアップ機器をシガーソケットにつなぐ。これによってバッテリーを外しても、カーナビなどの設定がリセットされることを防ぐ。
そうした準備の上で、バッテリーの交換となる。準備が完璧であれば、あとはプロの整備士であるだけに、その交換作業は非常にスムーズでスピーディなもの。バッテリーを固定している器具とバッテリーが発生するガスを車外に放出するホースを取り外す。古いバッテリーを下ろして、パナソニックのハイブリッドカー専用「Caos(カオス)シリーズ」を装着。そして外すときと逆の手順を踏んで、バッテリーを固定し、内装を元に戻してゆく。マニュアルがあることもあり、その作業によどみはない。10分ほどで作業は終了。まさにあっと言う間のことであった。
ちなみに、パナソニックのアイドリングストップ車向けのバッテリーにはカーバッテリー寿命判定ユニット「LifeWINK(ライフ・ウィンク)」が用意されている。ユーザーが車内にいながらバッテリーの健康状態を把握できるアイテムだ。
このように、パナソニックバッテリー取り扱い店であれば、マニュアルや研修によってサポートされたプロフェッショナルの作業によって安心して社外品を利用することができる。ディーラー交換以外の選択肢が存在していたのだ。