無限、電動バイク「神電 参」のメカニズム…トランスミッション不要の理由

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無限 神電 参
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マン島TTレースの電動バイククラス「ゼロTT」で優勝を飾った無限の『神電 参』の技術的な仕組みは、すでに実用化されている多くの電気自動車と基本的に変わらない。動力源はバッテリー、インバーター、モーターの3要素から成り、変速機構やクラッチは持たず、完全なオートマチックだ。

モーターは、三相交流・永久磁石回転子型・同期電動機。回転子に電流を伝えるブラシはなく、ブラシレスとも呼ばれる。周囲の固定子(ステータ)のコイルに三相交流(3つの交流が組み合わさった電流)を流すと、そこに磁界が発生。永久磁石を備えた回転子(ローター)は、その磁界に同期して反発、吸引しながら追従し、回転する。

神電では、モーターはピボット前方に搭載され、そのケースがフレームの一部としてスイングアームピボットを支持している。また、モーターの冷却は油冷式。ちなみにその冷却オイルは、モチュールが神電専用に特別に作ったものだ。

マシンの大きなスペースを占めるのが電源となるバッテリーだが、発生電流は直流なので、それを交流に変換し、電流、電圧と周波数を最適制御してモーターに供給しなければならない。その役目を担うのがインバーターであり、これはマシン下部に設置され、発熱が伴うので水冷式となっている。

モーターの出力特性は、内燃機関とは異なり、回転開始前から、スロットルを全開にして最大電流を流せばコイルの磁力によって最大トルクを発揮できる。

神電 参のモーター性能は、最大トルク220Nm、最高出力は134ps(100kW)と発表される。モーターは回転が始まるとともに最大トルクを発揮でき、その最大トルク値は電流上限値で決まり、回転が上昇してもトルクはフラットなまま最大値に保たれ、出力=電流×電圧は回転数に比例して大きくなっていく。

だが、モーターには逆起電力が発生する宿命がある。モーターの構造は発電機と似ており、モーターを回すことで発電、逆向きの電力が生じる。そのため、ある回転数からは流し込める電流値が減少、トルク値は直線的に低下し始める。が、上限電圧を流し続けることで、出力=電流×電圧を一定に保つことができる。

中回転域のある点(計算上、神電 参は4300rpm)までが定トルク域で、出力は回転数に比例して上昇。そこから上限まではトルクが低下するも、出力一定域となるわけだ。

こうした特性ゆえ、ギヤ固定でも低回転域から充分な後輪駆動力、つまりトルクが得られ、クラッチも必要ない。また、高回転高速度域では、トルクが低くなり、ギヤを高段位にシフトした時と同じような効果が生じているのである。

しかも、エンジンブレーキの効き具合も制御され、低速度域ではギヤが低段位のときのように強く効くため、その意味でも、ミッションの必要性を感じさせない。

こうした電動バイクの特性を生かすべく、神電では左右ステップ部にペダルはなく、ステップワークに集中できるようになっている。また、右レバーで前ブレーキ、左レバーで後ブレーキと、スクーター感覚でのライディング操作を可能としている。

《和歌山 利宏》

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