【三菱重工 ターボ技術者インタビュー】近年、ターボの需要が高まった理由とは

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相模原地区のターボチャージャー工場。カートリッジ組み立てのほとんどは自動化されている
  • 相模原地区のターボチャージャー工場。カートリッジ組み立てのほとんどは自動化されている
  • ターボチャージャーの軸受け部分に注目。黄色い部分はオイル室で軸受けの潤滑と冷却を行う。緑色の部分はウォータージャケットで冷却水を循環させ、水でも冷やすのだ
  • 三菱重工 機械・設備ドメイン自動車部品事業部ターボ技術部次長の佐俣 章氏

このところターボチャージャーの需要が高まっている。その背景にあるのは、厳しくなってきた燃費規制だ。

「2021年までにクルマは、CO2の排出量を現行の130g/kmから95g/kmまで減らさないといけないんです。これを日本の燃費表示に直すと24.4km/リットルくらいになります。これはホンダ・フィットの1.3リットル車に相当する数字ですが、自動車メーカーの販売車種全体でこの数字にならないと高い税金が課せられることになるんです」

三菱重工 機械・設備ドメイン自動車部品事業部ターボ技術部次長の佐俣 章氏は、ターボ需要の高まりの理由を、燃費規制という側面から説明してくれた。ガソリン車でも燃費を高めるには、ハイブリッドやターボなどの追加デバイスによる効率アップが欠かせない状況になってきているのだ。

「ターボチャージャーは、ディーゼルエンジン向けとガソリンエンジン向けがありますが、このところディーゼルは自動車の増加数に準じた増加率になっています。それに対しガソリンエンジン向けはダウンサイジングエンジンへの転換により、急激に増えてきています」

こうした傾向が、件の理由を裏付けている。佐俣氏によれば、昨今のターボ需要高まりのきっかけはディーゼルエンジンから始まったと言う。

「まず2000年にディーゼルでのターボの需要が高まりました。排ガス規制が厳しくなってディーゼルにはターボを装着しないと、規制をクリアできなくなってしまったんですね」

現在はターボディーゼルとあえて謳うメーカーは少ないが、クリーンディーゼルと呼ぶエンジンはほぼ全てがターボを搭載している。それだけディーゼルではターボの普及率が高く、もはやターボ無しでは成立しない状況になっているのだ。

「現在のところ世界のターボチャージャー市場で三菱重工のシェアは20%といったところです。これをここ3、4年で28%くらいにもっていきたい、というのが我々の目標です」

高まる需要での自然増だけでなく、シェアを増やすには単に増産体制を敷くだけでなく、更なる性能面での追求も欠かせない。

「ダウンサイジング、アトキンソンサイクル、EGR(排気ガスを再循環させる装置)などによって、ターボが受け取れる排気エネルギーは減少しています。その一方で、過給圧に対する要求はますます高まっていきますから、ターボチャージャーの効率を高めていくことが今後も求められていくと思っています」

ところでターボ車と言えば、一昔前まで高速走行後はアフターアイドリングを行わないと、タービンが焼き付くなどと言われたものだ。しかし最近はターボタイマーなどと呼ばれたアフターパーツも、あまり見かけなくなっている。今のターボ車でもアフターアイドリングは必要なのだろうか?

「ターボチャージャー自体は耐熱性が高いので、冷却を止めたことで軸受け部がヒートソークバックを起こしてエンジンオイルが炭化しなければ大丈夫なんです。最近はウォーターポンプの電動化も進んで、ガソリン車用のターボは水冷になっているので、ほとんどアフターアイドリングも必要なくなっているんですよ」

高速道路などのパーキングで駐車するようなシーンでも、全開状態から急停止する訳ではないから、ほとんど影響はないそうだ。気になるなら、パーキングの手前からスローダウンする程度で十分。アイドリングストップが効いてしまっても問題は無さそうだ。

《高根英幸》

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