環境に優しく、現場の声で進化するバランスウェイト…マルエム

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マルエム 鉄製貼付プレミアムロールウェイト
  • マルエム 鉄製貼付プレミアムロールウェイト
  • ビッグフット埼玉川口店
  • 商品説明をする、マルエム 営業本部 営業店舗管理課 鹿沼宏充氏
  • 実際のピット作業で、貼付けを行ってもらう
  • 実際のピット作業で、貼付けを行ってもらう
  • まずは古いウェイトをはずす
  • タイヤのバランスをチェック
  • マルエムのバランスウェイトをカッターで切る

マルエムは、タイヤバルブ、バランスウェイト、関連工具などを手掛ける自動車部品の中堅メーカーである。同社のスチール製バランスウェイト(貼り込み式)は、環境性能はもとより、現場の声を採り入れた作業性の良さが特徴だという。

その特徴を探るため、同社の実際の営業活動を取材。単なる商品説明だけでなく、ピットで実際にバランスウェイトの取り付けやはがす作業など、店舗の担当者に体験してもらいながら行った。

取材にあたり協力してもらったのは、埼玉県にあるタイヤショップ「ビッグフット埼玉川口店」。商品説明をするのは、マルエム 営業本部 営業店舗管理課 鹿沼宏充氏だ。

◆作業性の悪さを克服したスチール製バランスウェイト

メーカーや整備工場関係者にとっては言うまでもないことかもしれないが、通常ホイールのバランスウェイトは鉛製のことが多い。鉛は曲げたり切ったりの加工がしやすい反面、近年では廃棄時の環境汚染などが問題となっている。そのため、自動車メーカーのラインオフの状態では、スチール製のウェイトが装着される傾向にあるのだ。欧州などでは、すでに鉛のウェイトは使用禁止となっている。

マルエムも鉛製のウェイトをラインナップしているが、環境問題や今後日本での規制が強まる可能性を考え、スチール製のウェイトにもこだわりを持って開発しているという。そのひとつがウェイトの塗装だ。「スチール製のウェイトはどうしても錆の問題が避けられません。そのため防錆をかねて塗装するのですが、ドレスアップユースを考慮して色をシルバーとガンメタリックの2種類を用意しています」と鹿沼氏は説明する。

しかし、店舗側や整備工場としては、スチール製のウェイトは作業性が鉛製より劣るという認識が一般的だ。自動車メーカーは環境にやさしいスチール製ウェイトの利用に積極的だが、アフターマーケットやディーラーを含む整備工場では、作業がしやすい鉛製ウェイトを好む傾向がある。鉛製ウェイトは、切れ込みからの切り離しがハサミで簡単にできる。素材が柔らかいのでホイールにも貼り付けやすい。はがす際もウェイト全体をまとめてはがしやすい。これに対し、スチール製ウェイトははさみなどでは切れないので、最初から分離した状態でテープに張り付いている。そのため、はがすときにどうしてもバラバラにはがれてしまうことが多かった。

じつはマルエムのスチール製ウェイトは、冒頭で述べた通り、このような現場の意見を考慮したうえで従来製品から改良が加えられている。まず、同社のウェイトは横から見ると台形になっている。これは、ホイールの曲面に貼り付けたとき、より自然な角度でウェイトが張り付くようにするためだ。専用のローラーを使えばさらに貼り付けを確実なものにできる。

はがしやすさの対策はどうだろうか。鹿沼氏によれば、はがしやすさの工夫が同社のスチール製ウェイトの他にない特徴だという。ウェイトの台紙となるテープに特殊な材質を使うことで、はがすときにテープがちぎれにくくなっている。このため、ウェイトがバラバラになりにくく、従来のスチール製ウェイトより短時間で除去ができる。もちろん、だからといってテープの粘着力を落としているわけではないそうだ。

◆実際の作業性をピットでテスト

続いて店舗側の担当者に実際のピット作業をしてもらうことになった。すでにタイヤ交換の作業を終えて、バランス調整の段階になったタイヤを用意してもらう。ホイールバランサーにセットして、スイッチを入れる。回転するタイヤから必要なウェイトの重さと位置を読み取り、機械に表示される。今回は20gと35gのウェイトが必要となった。

スチール製ウェイトは5g単位になっているので、バランサーの数値で必要な数のウェイトをテープから切り離す。テープのカットは専用のハサミで行う。貼り付ける位置を見極め、剥離紙をはがしてウェイトを張り付ける。ローラーで数回押し付けてしっかり固定したら、再びバランサーでホイールバランスをみる。問題なければ貼り付け作業は終了だ。貼り付け作業は、基本的に鉛製ウェイトや一般的なスチール製ウェイトと変わらない。

続いて、スチール製ウェイトの弱点である、除去作業を試してもらう。貼り付けたばかりだが、はがすときはコテのようなものが必要だ。さきほどウェイトを切り離した専用ハサミの柄の部分が剥離用のコテになっている。コテをあてながら端からウェイトを持ち上げていくと、テープでつながった他のウェイトも持ち上がってくる。最初はゆっくりはがしていくのがよいだろう。

持ち上げ方によっては、ウェイトの切れ目でテープがちぎれることもあったが、従来のスチール製ウェイトよりははがす作業工程は短縮できそうだ。

◆ウェイトのはがしやすさよりはがした後が残らないことが重要

最後に作業を行った柳沼大輔店長に、実際に作業した感想を聞いてみた。

「たしかに従来のスチール製ウェイトより作業は楽ですね。全くちぎれないというわけではありませんが、鉛でもうまくはがれないことやバラバラに貼り付けられていることもあるので、全体的な手間は変わらないかもしれません。あと、テープ部分の接着剤があまり残らないのがいいですね。実際作業していると、バラバラに剥がれることより、テープの接着剤やスポンジクッションなどが残ると、きれいにするのが大変なのです」。

因みに、マルエムのウェイトのテープは専用に開発した接着剤の両面テープを利用しており、耐熱性も高く作られている。はがすときにスポンジなど余分な素材が残らないような台紙も使っているという。

バランスウェイトという重要だが単純な部品だと、どの製品も差はないように思うかもしれないが、環境問題も含めて、材質、精度、耐久性、作業効率の良さなど工夫されている点は意外と多くあるようだ。

《中尾真二》

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